写真で振り返る 第160回天皇賞(秋) レース回顧




レース

スタートでポンと出たアエロリット。
内でカデナ、ケイアイノーテックと下げたのもあり、すいすいとポジションが取れたアーモンドアイ。この時点で割と勝負ありに感じましたが、まだ何があるか分かりません。

ダノンプレミアムも不利なくスタートを決めた一方で、若干隣のゴーフォザサミットと接触するように出てしまい、後手となったサートゥルナーリア。
ここからサートゥルナーリアがハミを噛んでしまい、コーナーで内に切れ込む時にグワッとかかってしまいました。
外向かせてるんですけどね。まぁ自分のパートナーもかかる馬なので、こればっかりは同情します。

アルアインやワグネリアンももう1列前に行きたかったと思いますが、コーナーで内からドレッドノータスにランフォザローゼスに入られたのもあり、どうしても1列後ろに。
これだから東京は…というのは簡単ですが、やや苦しい展開になってしまいました。

2コーナーの付近でサートゥルナーリアがアーモンドアイの前に行く時にヒヤッとしたシーンがありました。
写真撮っていた?と思ったけどなかった。
アーモンドアイのお尻が埒にぶつかっているので、一歩間違えばではありましたね。

アエロリットが先頭で奥深い向正面へ入ります。

ほぼ予想されたような隊列で流れます。
ペースは遅めの35.7-47.3-59.0。
とはいえ、極端なスローという評価もしにくいですし、昨年が59.4通過で1:57.0を切りましたので、それに近い感じになるかなと思いながら見ていました。

道中はほとんど気になるところはありませんでした。
スワーヴリチャードがやや行きたそうな様子には見えなくもないですが、この馬はいつもこんなもんだし、行きっぷりがなかった昨年に比べるとこちらの方が遥かに良いです。
サートゥルナーリアも1000m通過位になれば大体落ち着いて走っているようには見えました。
アーモンドアイは内をじっくり。促すでもなく、無理なく追走をしていました。

アエロリットのペースは一定を保っているように見え、じわっと上げながら力ない馬を振り落としていきます。
すぐ後ろにいたスティッフェリオ、ドレッドノータスや外々を走らされたアルアイン、ウインブライト辺りも手ごたえが怪しくなりながらの4コーナー。

直線に入り、アエロリットが先頭で粘るところ、サートゥルナーリア、ダノンプレミアムが襲い掛かります。
サートゥルナーリアが馬なりに見えますが、ダノンプレミアムに並びかけられてしまいます。

内で粘るアエロリット。
59.0で走れれば、粘りは健在。ほぼ確実に良馬場東京マイルなら1:31.0を切って走れる優秀なスピード馬です。そう簡単に崩れません。
そんな3頭の後ろから、内に潜り込む白いシャドーロール。

ウインブライトやスワーヴリチャードもまだ頑張っていますが、ペースと馬場を考えれば現時点で前の4頭に勝ち馬は絞られたかなと思っていました。
後方からワグネリアンも頑張っていますが、差し切るには至らなそうです。

サートゥルナーリアが追い出すも前を交わせずに苦戦しているところ、外からダノンプレミアムが前に出ます。
アエロリットは内で驚異の粘り腰。

その3頭を文字通り「一瞬で」並びかけ、前に出たアーモンドアイ。
この時の「ドワ!」という文字にならない歓声。
勝つことを嘱望された名馬にだけ向けられる特別な瞬間でした。あの一体感は現場にいた人は分かるのではないでしょうか。

後方で頑張っている組ではスワーヴリチャードも悪くない走りでしたが、年を重ねるにつれて走りに上下動が出てきたのが気になります。
宝塚記念でもそうでしたが、スピードの乗りが全盛期、若いころに比べるとイマイチに感じてしまいます。

一方でウインブライトは結構頑張りました。
負けたものの、ここは不得意と言っていい舞台です。
それでもしっかり最後まで走ろうとしていました。オールカマーではバタバタでしたが、強い馬に食らいつくガッツみたいなものがありました。
恐らく香港でしょうが、いいレースができると思います。
ただ、やはり基礎スピードがスワーヴリチャードにも劣りますので、ゴール前は前と離されてしてしまいました。

鞭も使わずに抜け出すアーモンドアイ。

その後ろで懸命に鞭を振るうアエロリットの戸崎騎手、サートゥルナーリアのスミヨン騎手、そしてダノンプレミアムの川田騎手。
彼らの頑張りを無視するかのようにスクリーンを確認するアーモンドアイのルメール騎手。

速く走ることが宿命の競走馬にとって、性能差を見せつけられた残酷なワンシーン。

アエロリットは頑張って走りました。
ペースもほぼ完ぺきで、自身の力で出し切った59.0-57.7=1:56.7。これ以上何を望めと?
内を閉めればアーモンドアイは外に行ったでしょうし、サートゥルナーリアがバテたゾーンが開いたので、あの瞬発力を見せつけられると抜けてこられたでしょうね。
フェアに走りきりました。素晴らしいレースでしたし、素晴らしい粘りを見せてくれました。
4コーナー手前からのじわじわとスタミナを削る走りから直線入り口で最速ラップで後続を一度離して走れる器用さ。あと一歩なのは時代が悪いのではなく、この馬の生まれ持った星みたいなもんでしょう。こういう馬も愛されますし、無事に引退まで走り切ってほしいです。

ワグネリアンも後方から追い込んできましたがスタートからの位置取りがもう少し前ならもっと際どい2着争いでしたね。
今回は外枠からでしたが、東京2400mならもう1つ2つ着順は上げられると思います。
33秒台前半の末脚炸裂!というタイプじゃないので、流れは向きましたが、枠の差を逆転するまでのパワーはありませんでした。

4着にぶっこんできたユーキャンスマイルは上がり33.7とアーモンドアイの数字を上回りました。
決め打ちだったので、このレースに関しての勝ち負けは難しかったとは思いますが、左回りの特性、高速馬場向きは存分に発揮しました。
ジャパンカップの方がレースはしやすいと思いますので、アーモンドアイが出てくれば対抗馬まで、出てこなければ本命候補まで急浮上です。

後続をみるみる内に離していくアーモンドアイ。
この辺りで、「一体何が起きているのか?」と変な感覚になりました。後ろにいるのは新馬ではありません。
各国のG1馬にしかほぼ与えられない118ポンドを超える一流のサラブレッドです。
それほどまでに凄まじい走り。

ダノンプレミアムは最後よれてしまったように、一杯一杯。
スタートから力みがちではありますが、こういう気性の馬ですし、スピードの代償みたいなものです。
道中は無理なく追走できていましたし、追い出すタイミングも悪くなかったと思います。
ただ、残り200mで脚が上がり、ストライドに乱れが生じたように、本質的にこの距離だと苦しいですかね。
切れ味抜群っていうタイプではないので、こういうレースは望み通りだったはずですが、この着差以上の負け方。2000mで逆転するイメージはこれで完全に湧かなくなりました。

サートゥルナーリアはラスト100mで大失速。

前半の力みはあったものの、「この時計で走れない」ということでしょうね。
前走は緩いレースで上がり勝負。今回は12.0を超えるラップのない淀みない流れ。追走していけば、スタミナが問われてしまいます。
このラップで走り切れる馬じゃないってことでしょうね。
ダービーも最後脚が上がってしまいましたが、ダービーのスタート前の入れ込みという言い訳ができました。
前走の雰囲気からもう少しやれてもいいと思うものの、もっとスローで末脚勝負のレース向きかな。多分今年の菊花賞も13秒台が1つもないという割とハードなレースでしたので、あっち行っても負けたかな、これ見る感じ。
本質的なスタミナが問われないスローの上がり勝負だと一気に突き抜けられそうですが、こういうレースは鬼門。そして古馬のG1ってそういうレースが少ないので、来年以降苦戦しそうな敗戦でした。

 

ここからもう後続は完全にフレームアウト。
参りました。1000m通過が59.0と出た時点で、直線は横一線に長いことなるかなと。馬場を考えるとそんな突き抜けるのは難しいペースだから。
1000m走ってからの予想がここまで外れると、もう何がなんやら。
競馬を多少見ていると思っていますが、ここまで残り1000mの結末が大きくイメージとずれるのはそうありません。

レース中にウイニングランも済ませます。
できる女は違うわ。十分強さを見せつけた後、最後はウイニングランもしてしまいました。なんじゃこりゃ。

時計的な話をするのもばかばかしいですが、1000m通過が目測で59.5。
そうすると、ラスト1000mが56.7。
同日新潟のルミエールオータムダッシュでレジーナフォルテと千直の鬼というかライオンのライオンボスが56.4。
助走があるから200mの後半100mの方が速いというのは分かりますが、それでもちょっと、ね。

スタートをポンと決めて、道中はじっくり。
内が開けばそこを一気に突き抜け、ゴール板前では手前をぴょんぴょん替えながら駆け抜けていきました。

走りの印象だけで言えば、ブエナビスタやジェンティルドンナよりも上に見えますし、近代日本競馬の最高の名牝であろうと思いました。
ディープインパクト、オルフェーヴル、キタサンブラックとはタイプが違うので何とも言えませんが、まぁ比較対象はそこになるでしょうね。

戻ってくる時はケロッとしているように見えますが、この馬はご存じの通りゴール後ふらふらするなどの症状が出るらしい。
もしかしたら無酸素で走れる距離が長いのかもしれませんね。
馬って大体600m位が一息で走れる距離らしいですが、全力疾走中は呼吸が減りますが、その距離が長いのかも。もうなんというか、そういう感じなのかなーなんて。

次はジャパンカップか香港からしい。

確かにジャパンカップに出てきて、誰が逆転できるんだ?というと…このメンバー相手に楽勝されると、もう日本競馬には残機がありません。
ただ、香港カップでも同じようなもん。

ここに非常にラップが似通った毎日王冠を豪快に差し切ったダノンキングリーがいても、絶好の流れでアーモンドアイの1列後ろから上がり33.7までかな。
そうなるともしかしたら2馬身後ろにはいたかもね。

豪州ではリスグラシューが勝利していますが、隠し玉でリスグラシュー?いやいや、相手はこの馬だぞ。

1.6倍は美味しかったですね。この結果を見てしまうと。




1 個のコメント

  • いやはや凄かったですね。これだけのメンバーでも並ぶ間もないのかと。まるでマイル戦のようなラップなのにあの位置で脚を溜められて、なおかつ余裕の瞬発力をカマせるのかと。しかも8割のデキとかにわかに信じられん。もう日本より緯度が下の芝コースだったら、よほどのアクシデントがない限り負けないでしょうね。安心感だけならディープに匹敵してるもの。
    影のMVPアエロリットは、せめてヴィクトリアマイルまで頑張ってくれないかなぁ。鬼の掟があるかもだけど、3歳G1のタイトルだけとはあまりにももったいない。まぁそれを言ったらダノンプレミアムは2歳G1のみではあるんですけどね。
    とにもかくにも素晴らしく、それでいて残酷とも言えるレースでしたね。
    世界中のホースマンは、どう思ったんだろうか。
    馬券?
    ○◎▲決着だったので、それなりに、まあ(ニッコリ

    観戦お疲れ様でした。

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