2017 ドバイミーティング レース回顧




日本馬がたくさん出走しているドバイのレースです。
雨が降っていたらしく、ダートは泥んこ馬場を示す「Track Condition:MUDDY」でのレースになりました。

全部やると大変なので、適当にトリアージします。
Trakus Chartを完全に信じ切っていますので、そのまま使います。

 

ゴドルフィンマイル(G2・ダート1600m)

追い込み馬カフジテイク登場です。

ペースは前半から削り合いになりました。
逃げたノースアメリカのペースが23.22 – 45.56。半マイルでこれだと如何せんドバイの前残り馬場とはいえさすがに前が潰れます。
1000m通過が57.54。日本の芝でも文句なしのハイペースです。

ノースアメリカは1000m地点ではシャープアズテカに並ばれ、ヘヴィメタルと人気馬が前を形成して4コーナー。
カフジテイクはスタートから外々を走り、4コーナー手前から徐々に押して前に行こうとしていましたがそこはカフジテイク。
4コーナーでは後方から2番手の外目で走ることになりました。

前はノースアメリカが潰れ、ヘヴィメタルが潰れ、シャープアズテカが粘り込もうとするところをスタートで遅れて4コーナーでは内をするする6番手回ったセカンドサマーが内から伸び、ロスと一緒にシャープアズテカを抜き去ってゴール。
勝ち時計1:35.62。レコード。

カフジテイクは最後いい脚で伸びてきましたが勝ち馬とは6馬身3/4差の5着。
追い込み自体は悪くないペースになりましたし、馬場もこの状態というのもあり、思ったより勝負になったという印象です。
カフジテイクの上がりは1000m通過が59.06でゴールは1:36.86なので37.8。

他の馬よりいい脚に見えますが、レース上がり38.1なので、そこまでの違いを出せたか?というとそこは微妙です。
枠も外でしたので、内に入れる事もせず、じっくり外を走れたのは泥も被らなくて済んだので良かったと思います。

勝ったセカンドサマーはアルマクトゥームチャレンジR3を7着からの参戦。多分重賞初制覇。

ヘヴィメタルは勝ち馬から23馬身1/4差の8着、ノースアメリカは26馬身1/4差の10着。
韓国から挑戦のトリプルナインは55馬身1/4差の11着でした。

 

UAEダービー(G2・ダート1900m)

日本からエピカリスとアディラートの2頭が出走しました。
とてもいいレースだったと思います。

レースは外から好スタートを切ったアディラートもエピカリス、内からカタールマンと前を形成。
サンダースノーも5番手位にいて、フォーリーもその隣。
ランカスターボンバーは後方で色々と手が動いていたので、こりゃダメだと思いながら見ていました。

4コーナーでアディラートが徐々に手が動き出しましたが、それを悠々とエピカリスが前で外からサンダースノー。
ペースが36.34 – 60.84。とてもいい感じで走ります。

直線は逃げるエピカリスに追うサンダースノー。
スミヨン騎手が馬上で危うく落ちそうになる程よろけてから再度もう一伸びしてきます。
本当に僅かな差。

1800m通過時点ではエピカリスが1:51.37、サンダースノー:1:51.52。

距離にして15m差があったそうですが、残り100mで逆転されました。
勝った方を褒めた方がいいでしょうね。それ位力強いゴール前でした。この馬を今年注目馬として挙げたのは私の好手だったと思います。
勝ち時計1:57.76。
3着には1馬身1/4差でマスタープラン、そこから2馬身遅れてランカスターボンバーでした。

サンダースノーはケンタッキーダービーを「good option」と言っていますので、行くかも。
エピカリスもこの走りができれば枠がもっと内側なら着差が着差だけに違ったかな。

アディラートはバテてしまい19馬身半差の12着。この馬はもっとスピード勝負で。お疲れさまでした。

 

ドバイターフ(G1・芝1800m)

リアルスティールが回避してしまいましたが、ヴィブロスが初海外遠征をしています。メンバーは面白い。
ソロウ、テピンが出てくれば…ですが仕方ありません。

スタートしてリブチェスターが先頭に立ち、ザラクも前の方。
行くかと思ったベリースペシャルがそこまで行かず、ドーヴィルやムタカイーフも前目。
ヴィブロスは10番手位の前半です。

途中からベリースペシャルが先頭に立ちましたが、ペースはスロー。
38.30 – 62.74。こりゃ遅い。

直線は末脚勝負になりました。
早めに先頭に立ったリブチェスター。ムタカイーフもザラクも前を抜くほどの伸びがなく、リブチェスターが差をつけます。
内から外へヴィブロスが出していく中、その前にヘシェムがいい脚です。

ヘシェムとリブチェスターが並ぶ中、外からヴィブロスが一気に伸びてきます。
最後はディープインパクト産駒らしい伸び脚で残り1Fで1馬身半前にいる2頭をフィニッシュに向けてラストは11.35の末脚炸裂。2着のヘシェムが11.57ですので、抜き去って半馬身差も頷けます。

レースの上がりが35.25。
馬場はやや重ですし風も強いというのもあるでしょう。スローの割には出てない印象です。

ヴィブロスはゴール前素晴らしい末脚でした。
ここまで完璧に勝ち切るとは…。道中の追走は徐々に後ろになっていたと思いましたが、内をじっくり。
4コーナーから直線にかけて一度内を突き、差を詰め、直線を斜めに走ってエシェムの後ろのスペースを使いました。これはお見事ですね。
一体いつ外に出したんだ?というのが分かった時に「凄い!」と思わず声が出ました。一人の夜なのに。

戻ってきてどこ使うんですかね。ヴィクトリアマイルかな。

リブチェスターは好スタートからスローに落として直線粘りそうでしたが、最後止まりました。
休み明けもあったのかな。

ザラクはやはりG1になるとこの程度、と言われそうな敗戦です。
道中の位置から、直線でもバテたベリースペシャル以外は1頭も抜けていません。

デコレーテッドナイトは期待したのですが残念ですが伸びきれませんでした。
上位陣がヴィブロスを除けばヘシェム、リブチェスター、ザラク、ムタカイーフと欧州のそこそこの馬という事を考えると、力負けですね。

 

ドバイシーマクラシック(G1・芝2410m)

銀メダル大好きサウンズオブアースが出走しました。
昨年の勝ち馬であるポストポンド、お馴染みのハイランドリールも出走をしてきています。

皆さん内を開けながら走ります。
映像だけですが、内が雨で使われて悪化してしまっています。

ペースは超スロー。ドスロー。7頭しかいませんし、1頭が逃げると決まっている、そして欧州馬。
前後半で直すと1:18.35 – 1:14.04。
後半4秒加速はこのレースでは珍しくないですが、さすがに1000m通過で66.5は遅い。ドバイゴールドカップより遅い。

直線は開いた内も使われ、先頭のハイランドリールが伸びを欠き、外からジャックスホブスが持ったまま。
内からセヴンスヘヴンにプライズマネーなども頑張っていますが、一気にジャックスホブスが追い出して突き放しました。
完勝です。2着に2馬身1/4。勝ち時計2:32.393。この馬の上がりは36.33。

ポストポンドはイマイチ伸びきれず。
今年のパフォーマンスだけを見れば、少なくとも全盛期のピーク時と比べてしまうと。
1年ずっと完璧を保つ難しさはありますが、これが競馬ですね。

ハイランドリールはどうしたものでしょう。ペースも上げきれない感じでした。
馬場がこの程度の悪化でも耐えられなかったとしか。やや硬い馬場でないと厳しいとは思っていましたが、ここまでダメだとは…。

サウンズオブアースも全然伸びず。勝ち馬から10馬身も遅れてしまいました。
丁度いいのをマークしていていたのに。まぁ仕方ないでしょう。遠征向きじゃないという可能性もありますし。しかしアーンショウにも負けてしまうとは思いませんでした。

 

ドバイワールドカップ(G1・ダート2000m)

アウォーディー、ラニ、ゴールドドリーム、アポロケンタッキーと4頭も出走しました。
そして北米最強馬アロゲイトが登場していますので、何馬身差なのか?的な話になりそうな戦前の予想です。

アロゲイトの単勝1.2倍。
そして出遅れ。イマイチ乗り切らない前半。世界中の競馬ファンが悲鳴を上げたでしょう。そして直線のカタルシス。

この芦毛、究極のエンターテイナー。
デビュー8戦。センセーショナルに登場したトラヴァーズSから約6か月。既にやる事がありません。

スタートで両隣に挟まれて最初のコーナーでは最後2番手。
そこから手が動いているように見えてもなかなか前に取りつけず、800m地点でもロングリバーから10馬身位遅れたまま。1000m通過が60.5というドバイワールドカップとしては決しておかしなペースではありません。
徐々にスピードアップして直線入り口では逃げるガンランナーを射程に入れて直線へ。

そこからの直線の2Fの時計は以下の通りです。

アロゲイト:23.829
ガンランナー:24.727
ネオリシック:25.216
アウォーディー25.256
ラニ:24.866

多くの馬が24秒台後半~25秒台前半で走っているのに対し、1頭だけ23秒台。そしてラニは頑張っています。
僅か400mで多くの馬相手に6馬身~10馬身の差をつける事ができるスピードです。同じ馬か?と思う位の数字の差。

カリフォルニアクロームなどと違い、スタートからスーッと走り、手応え十分という感じでコーナーに入るのではなく、少しズブいように見える所がある馬です。
それでも、今回はさすがに負けるかもしれないと思いました。
挟まれて出遅れて道中後方であれば、幾らでも言い訳ができるレースです。でもそんな常識なんぞぶち壊すのが本物の世界のトップですね。競馬に限らずどの世界でも。

ラップを切り出すと以下の通りです。
アロゲイト :26.61 – 23.06 – 23.90 – 24.76 – 23.82
ガンランナー:24.93 – 23.41 – 25.47 – 24.93 – 24.72

スタートの失敗を挽回するかのような向正面での走り、そしてそんな無理をしても直線までラップを落とさないその強さ。
今回は負けるパターンだったと思いますが、それでもこの走りを見ると、ライバル達はどうしようもないと思います。

日本馬最先着のアウォーディー。
好スタートから早めに内をキープして、道中は食らいつき、直線では離されていくものの、粘って粘って5着。
勝ち馬からはレーティング通り10馬身半も差がついてしまいましたが、北米でも2番手なら十分狙えると思います。

ラニは道中一生懸命に走って追いかけていました。ムーア騎手は疲れたでしょうね。
馬以上に疲れたんじゃないでしょうか。
最後は伸びつつも、同じように後方にいたキーンアイスが内を突き、ラニは外。結果的にキーンアイスから4馬身、勝ち馬から15馬身3/4差の8着。

アポロケンタッキーは道中は悪い位置ではないのですが、3コーナーから遅れてしまいました。結果的には20馬身3/4差の9着。

ゴールドドリームは積極的に進めましたが、距離も長いのでしょう。
3コーナーで早々に手応えがなくなり、外からアロゲイトに並ぶ事無く交わされてしまった所で一気に気持ちが切れてしまったのか直線は歩いてしまいました。
ぶっちぎりのビリになってしまい、60馬身半差という大敗です。ラスト2Fが33.52。

ダートは北米仕様の土の薄いダートですし、日本の深い砂のダートとは全然違います。
やはりある程度芝で走れる馬で、キックバックにへこたれない馬ということになるのかもしれません。

ただ、アロゲイトは特別な馬です。毎年こんなのがポンポン出る事はありません。
それ以外の馬には日本でG1を連戦連勝でもないアウォーディーでも決して劣っているとは思いませんので、今回みたいなレースができる馬であればある程度見せ場を作れると思います。

アロゲイトのレーティングとしては129~131ポンド位かな。
現在の134ポンドを超えるには出遅れをどこまで加味するかですが、ガンランナー相手に2馬身1/4差では難しいでしょうね。