写真で振り返る 第64回有馬記念 レース回顧




レース

スタートでキセキ、レイデオロが遅れました。
シュヴァルグランも外枠で隣がアエロリットということもあり、あまり行きません。
ワールドプレミアも下げます。

積極的だったのは内のスティッフェリオですが、これは予定通り。
むしろエタリオウやスカーレットカラーの行きっぷりの方が目につきました。さすがに内枠だと簡単に引き下がりません。

それでもスピードのあるアエロリットが外からスーッと。クロコスミアも前に。
アーモンドアイは外のサートゥルナーリアが下げ、レイデオロとワールドプレミアが下げたため、かなり自由のある感じで走れていました。

内でリスグラシューと並ぶようにして1周目の4コーナーへ向かいます。
スワーヴリチャードがややかかっています。スタートで前に出したら行きっぷりが良く、両サイドも引かないためにこんなことに。
ヴェロックスも行きたがりですが、4コーナーにかけてスッと内へ。ここは狙い通りでしょう。

内の連中が引かなかったので、内埒で前がポカンと開いたリスグラシュー。こう見ると楽な位置にいます。

アエロリット先頭で1周目のホームストレッチへ。

スカーレットカラーが思いの外前にいるのと、キセキが遅れたこともあり後ろにいますが、それ以外は予想から大きく外れる感じもない位置です。
リスグラシューがすんなり内に入りましたが、枠の巡りも含めて非常にうまくいっています。

早々に縦長になり、ハイペースでレースが進みます。

アーモンドアイ周辺です。

確かにパトロールビデオ見る限りだと1周目でフィエールマンの後ろにつけようとしていたように見えますが、抜いてしまいました。
「随分と行きっぷりがいいな」とは思っていましたが、決して悪い位置ではないので、そこまで影響したのか?というと。。。
スワーヴリチャードもベロを出し始め、まずまず落ち着きだします。

フィエールマンは注目していたこともありいい位置にいるなと思いました。走りの雰囲気も良かったです。

サートゥルナーリア周辺です。

サートゥルナーリアはかかりそうなタイプですが、馬の後ろに入るとぐっと抑えが効きます。
神戸新聞杯もそうでしたので、「馬の後ろに早いタイミングで入れるか?」がレースの鍵になります。今回は最初の4コーナーでアーモンドアイの内に入れ、フィエールマンが前、外にアーモンドアイと楽な位置に入れたのですが、アーモンドアイが前に行った所で自身も反応をしていますが、そこはスミヨン騎手。馬の顔を小刻みに左右に振りつつ、ガッシリ抑え、フィエールマンの後ろに戻しました。ここがこの馬にとって最大のポイントだったでしょうね。

ちゃっかりキセキもこの辺にいます。
後ろにシュヴァルグラン、レイデオロとワールドプレミアという展開です。

歓声が静まり、1コーナーへ。

アエロリットが1000m通過58.5とマイル戦と間違うかのようなペースでぶっ飛ばします。競馬場はどよめきが。
さすがに苦しいですが、引退レースです。頑張っています。
天皇賞秋より高速で逃げてしまっては…。

このペースならツインターボさながらの離しっぷりでもおかしくないですが、2番手のクロコスミアとスティッフェリオが6馬身程度にいます。
目測だとアーモンドアイが10馬身差の60.3秒付近ですし、ワールドプレミアでも61秒を少し上回るかどうか?位のペースです。
ちょっとスローの年なら先頭でもおかしくない位の時計で通過しました。

「このペースにしては随分後続が近いな」と思いながら向正面へ入ります。
2コーナー出口付近でもアーモンドアイが行きたがっていますが、このペースでは追いかけてはいけません。振り返ると随分とちぐはぐなレースをしてしまっています。
並ばれたスワーヴリチャードもちょっとスイッチが入りました。

もやっている中、アエロリットが飛ばします。
全くペースを落とさずにずんずんと進み、これは消耗戦に持ち込み過ぎました。

アエロリットが順調に飛ばし、スティッフェリオが2番手。
クロコスミアは早々に苦しそうになり、アルアインが引退レースというのもあるでしょう。今まで以上に積極的に前を追いかけていきました。

後続の動きで言えば、一歩先に動いたレイデオロとシュヴァルグランに対し、ワールドプレミアは案の定スピードの乗りが悪いのか遅れました。
内に一度入れて、一気に下りで加速して大外に持ち出すコース取りはさすがだと思いました。
コーナーを真っ直ぐ走っていたイメージですね。

アエロリットが失速が目で見てもわかりましたが、そこは粘りが身上のスピード馬。ツインターボの有馬記念のようにはいきません。
クロコスミアやスカーレットカラーが失速。入れ替わるように、まるでナリタブライアンの有馬記念を見ているかのような錯覚になったアーモンドアイのシャドーロールの見え方。

アルアインも苦しそうですし、中団だとスワーヴリチャードも苦戦しています。
一方で外から馬なりで上がっていくサートゥルナーリア。フィエールマンもいい感じでした。リスグラシューはまだ内でジックリ。この段階で結果的には早仕掛けでもあったアーモンドアイ。

4コーナーから直線へ。

アーモンドアイが先頭に立ちますが、後ろでまだ進路を探しつつ外に持ち出そうとしているリスグラシューの赤い帽子。
こちらはドゥラメンテの皐月賞のように、もっと綺麗に、お淑やかではありましたが、内から外へ斜めに一気に走り切りました。

  • スワーヴリチャードの脚がなかった
  • 内のバテた馬を交わすために多くの馬が外を回したため、中団にスペースができた

がここまで綺麗に外に出せた主な要因ではありますが、手綱捌きは絶品でした。
内の馬はこのペースに巻き込まれてバテバテですので、外の勝負です。

アーモンドアイ、フィエールマン、サートゥルナーリア、リスグラシューと並びます。
ここにきて「あれ?アーモンドアイが苦しいぞ」とはっきりと。

一方で外からキャロットの2頭は手応え十分。
フィエールマンも頑張っていますし、ここから粘る馬ですので、まだ分かりませんでしたが、アーモンドアイを軸に買った私のとっては馬券は終戦でした。

そのフィエールマンはここからもう1つギアが上がるかと思いましたが、マークする馬を間違えましたね。結果的には。
仕方ありませんが、サートゥルナーリアにもほぼ抵抗できずにやられました。
ただ、やはり走りますね。来年の天皇賞や宝塚記念、秋のG1戦線は無事ならかなり期待できそうな走りでした。凱旋門賞ショックみたいに崩れてしまった馬もいますが、この馬は大丈夫そうです。

3歳馬ではヴェロックスが結果的に一番負けてしまいましたが、この辺りで随分と苦しそうでした。
もともと頭と上体の高い馬ではあるものの、後半はそれが目立ちました。
このペースでこの距離だと馬のタイプとして苦しいのかな。来年の大阪杯や宝塚記念で頑張ってもらえれば。外枠でも上手に走れていましたし、ここは力負けですね。

引退レースだったレイデオロも後方でもがいていました。
やはり走りは戻っておらず、昨年までのグンと加速する感じもなく、ワールドプレミアに一気に突き放されてしまいました。
スタート遅れも結果的には良い方に転んでいますし、この秋の走りを見ると衝撃はありません。
ダービーと天皇賞勝ちは立派ですが、「もっと勝てそうだったな」ということを残しての引退。レース選択を外部の人間がグダグダ言っても仕方ないですが、もったいない使われ方だった印象です。
ダービーと天皇賞秋はエイシンフラッシュと同じ。タイプは違いますけどね。

非サンデーでウインドインハーヘアの血が入るキングカメハメハ産駒。
天皇賞で魅せたスピードとホープフルSを勝つ早熟性。そしてダービー馬。
種牡馬のポテンシャルとしては一級品だと思います。前向きな気性が伝われば、早い時期から活躍馬を出すいい種牡馬になるんじゃないかな。お疲れ様です。

残り200m。
アーモンドアイが内へ。後続各馬が襲い掛かります。

スワーヴリチャードは大きな怪我は伝えられていませんのでそこは良かったと思います。
4コーナーではリスグラシューにカットされるように入られて若干バランスを崩したようには見えましたが、もう脚が残っていませんでした。
ジャパンカップの疲れというより、前半から前に出していき、向正面でもアーモンドアイが外からきて反応していましたし、息を上手に抜けなかったかな。
まだ現役でしょうし、来年も元気に走ってもらいたいです。

シュヴァルグランも後方から頑張っていますが、やはり外枠ということもあり、内に入れずに終始外。
最後本当によく走っています。6着ですからね。
リピーターが強い有馬記念でずっと外枠。歴史に「if」はありませんが、この得意とも言っていい舞台でずっと内枠引けてたら…。今年はそれでも苦しそうですが、昨年などは違った歴史だったかもしれません。

一気にリスグラシューが後続を振り切ってしまいます。
内で走りが乱れたアーモンドアイ。

坂の途中付近でアーモンドアイが手前を替えてからストライドが一気に乱れるように失速し、サートゥルナーリアを振り切ったリスグラシューが独走態勢に入ります。
後続からキセキやワールドプレミアも伸びていますが、この段階で勝負ありです。

キセキは出遅れもありましたし、凱旋門賞でも逃げてはいないように再度モデルチェンジをしているのかなんなのか。
このレースに限っては正解のような気がする一方で、先行しているキセキを期待していた側としては今後が気になるレースでした。
こちらも凱旋門賞の影響は少なさそうですので、来年も変わらず走ってくれるでしょう。ただ、どういうレースをするかは次見てみないと分からない。

ワールドプレミアは前半死んだふりからの直線一気。
この秋はこういった役割をユーキャンスマイルが担っていましたが、有馬記念ではこの馬でした。
結果的に3着と立派ですが、加速に時間がかかっている印象は菊花賞と変わらずなので、下り坂の利用ができる競馬場、となると天皇賞春が注目ですが、そこが狙い目でしょうね。
フィエールマン、ユーキャンスマイル、グローリーヴェイズと面白いメンバーが揃いそうな予感。無事に行ってほしいです。

完全に圧勝ムード。

サートゥルナーリアは負けて強しの内容ですので、悲観するものではありません。
後続はしっかり封じていますし、中山は走ります。
来年の春は大丈夫な気がしますが、秋はどうするんでしょうね。
馬の後ろに入ればしっかり走れますし、スタート前に消耗をセーブできればこれだけ走れるのだから来年の中距離は胸を張って主役級として頑張ってもらいたいです。
こういうレースは弱そう、と思っていた自分は何を見ていたのか?いや、スローの上がり勝負ならもっと炸裂するはず。

そしてアーモンドアイです。
9着とこの馬らしからぬ大崩れ。
やはり道中行きっぷりの良さが目立ちました。桜花賞辺りは追い込み馬でしたが、ここにきて先行するようになり、この有馬記念は顕著になったような気がします。
このペースに巻き込まれにいったというべきでしょう。さすがにここまで追い込み天国の競馬で4コーナー先頭で押し切れるほど日本の馬は甘くないってことです。
直線ではふらふらと余力はほぼなさそうでしたので、着差はあまり関係ない。
止まりつつも最後まで走ったことは来年に繋がると思っています。

それにしても競馬に絶対はないと知っていても、保険をかけずに買ってしまい、事前予想でピックアップした馬が上位独占。
ああ、3連複でも買っておけば。。。

この敗戦でケチがついたのは確かですが、どんな名馬でも負けるときは負けます。
キタサンブラックだって宝塚記念で崩れましたし、ジェンティルドンナも宝塚記念で崩れました。オルフェーヴルだって天皇賞春11着があります。
あの道中の感じだと来年は長めの距離は難しいかもしれません。
G1最多勝は確実だろうと思っていましたが、これで2勝しないといけない。伊達に多くの馬が7勝で止まっている訳じゃないってことですね。

圧倒的な走りでゴールへ向かうリスグラシュー。
カメラ好きとしてはゴールの瞬間が撮りたいですが、こうやって1頭が抜け出すと弱いです。
合わせるのは簡単なはずなのに外れる。ホームラン確実のど真ん中を力んで打ち損じる、そんな気分。

ガッツポーズで駆け抜けていきました。

勝ち時計2:30.5。
上がり34.7とダントツ。5馬身差。
時計も文句なしですし、驚異的な走りでした。
レーティングは書いている最中には出ていませんが、自分なら127。サートゥルナーリアが121。欧州の方が高い数字が出るヘボ仕様なのでエネイブルには届かないでしょうが、恐らくそれに近い数字になるのは確実です。

スタートして内がすんなり取れたのは内の連中がスタートから頑張ったからではありますが、それでも終始内からじっくり構え、直線大外に持ち出して一気に突き放すというのは「これがあのミスパンテールとかを追い詰めて届かないレースをしていたリスグラシューなの?」と疑う位のパフォーマンスでした。

引退レースで圧勝、2着と3着が3歳馬となると思い出すのはシンボリクリスエス。
あの馬も「もったいないな」と思ったものですが、この馬もこの成績を見たら「もったいない」。
ここまで急激に強くなった馬はカンパニー位かな。本当に強い印象を残していきました。

 

戻る各馬。
アーモンドアイが上を向いて歩いています。そういう時もあるさ。

 

リスグラシューは写真もピタッと止まって撮っており、名馬の振る舞いという印象を受けました。
ひょろひょろだった身体も有馬記念で少し太いかなと思ったのは、完成されたからでしょう。
併せ馬でいつもはそんなことなかったのに、無駄な力は使わないようになったのかもしれません。

 

色々な常識を壊してくれた有馬記念でした。
思い込みは良くない。知っている。「イノベーションのジレンマ」も読んだ。
でもなかなかね。

自分が作ったものや関与したプロジェクトに対して、その価値を過大評価する心理効果のこと。

をイケア効果と呼ぶけど、まさにこれ。自分の見た印象は何よりも優先してしまっている。
まだまだ修行が足りませんな。

 

今年で有馬記念の観戦(こんな位置での)は最後になると思います。
来年以降はテレビかな。それもまた一興。