写真で振り返る 第38回ジャパンカップ レース回顧




レース

どうしても横長になるゲートです。

最内で伸びあがる感じでアーモンドアイ。
スワーヴリチャードも少し後ろ脚で踏ん張っていますので、あまりいいスタートセンスじゃないのは今更。

キセキが素晴らしい駐立でスタートが良い時のキタサンブラックのように、スッと出ます。
この馬のイメージは大きく修正しないといけないですね。立派な先行馬ですし、こういう馬がいるとレースが締まります。

大幅な出遅れもなく、各馬一斉にスタートです。
外国馬の芦毛2頭がやや出負け。サンダリングブルーはそこまで行かないつもりだったのかなと思いますが、カプリはムーア騎手が促していますので、スタート直後から「良い流れ」とは言えない走りです。

スタートしてアーモンドアイにとってラッキーだったのは1枠1番で内埒まで距離があり、かなりリラックスして入れたなと思います。お隣ハッピーグリンが下げたこともあり、最初のコーナーまである程度自在に動ける環境でした。

先手を主張するでもなく、スッとスピードで先頭に立つキセキに外からノーブルマーズも積極的に動き、ガンコ。
スワーヴリチャードも前の2頭を追いかけるように自然と前に行きます。ある程度出して行くつもりという戦前のコメントもありましたので、その通りの騎乗です。

アーモンドアイはスペースのある内側をしっかり走り4番手位。キセキが内にジワジワ入れたのもあり、外から被せられて行き場を失って下がるという事もありませんでした。
スワーヴリチャードはウインテンダネスと並んで少しだけヒートアップしたような仕草も。

一方でサトノダイヤモンド周辺です。

スタートは悪くなかったのですが、どっちつかずでした。
シュヴァルグランに前に入られてしまい、下げるなら思い切って下げても良かったと思うのですが、自然と1列後ろになってしまいました。
もったいないですね。シュヴァルグランの位置は恐らくそこまで無理しなくても取れたはずなので、簡単に譲ってしまったという印象を受けました。

後方にサトノクラウンやカプリもいて、ミッキースワローも当然ながら後方待機です。

すっかり日が傾いた東京競馬場。
眩しい西日に向かって走ります。

スワーヴリチャードがコーナーでできたスペースを使って内へスルスルと入れます。
アーモンドアイを見る形で進める事になりました。

外でウインテンダネスがクビを振り、ややかかり気味。
ガンコの後ろに馬を置いて落ち着かせての2コーナーです。下げるのも良いですが、この手の馬で行き切れないのももどかしい。

後方は淡々と。
ハッピーグリンが内のいい所を走り、その外のシュヴァルグランも落ち着いて追走できています。サトノダイヤモンドはそのシュヴァルグランを見る形で2コーナーへ。

向正面に入り、キセキが先頭で引っ張ります。

その後ろからノーブルマーズがおり、並ぶように3番手でアーモンドアイ。
ガンコがいて、少しクビを振ってスワーヴリチャード。ギリギリの許容範囲でしょう。その外からウインテンダネス。こちらはなだめました。

中団にハッピーグリンにシュヴァルグラン。
サトノダイヤモンドがいて、サウンズオブアース。

後方に染め分け帽子のサトノクラウンにカプリ、最後方にミッキースワローとサンダリングブルーという展開です。

ペースはキセキがしっかりとした足取りで刻んで35.9-48.2-59.9。前半の1200mが1:11.7という素晴らしい配分。
遅くもなく、とはいえこの馬場を考えれば極端に速くもなく。
戦前の自分の拙い予想ではもっと落としてロングスパート勝負をするのかな?と思っていましたがなんのなんの。菊花賞馬、堂々と3歳牝馬に受けて立ちました。

後方ではサトノダイヤモンドの外にピッタリと張り付くようにサウンズオブアースがいました。
天皇賞ではスワーヴリチャードの外にマカヒキがいましたが、こちらも結構厄介でした。早めにシュヴァルグランの外に出したいサトノダイヤモンドに譲らないサウンズオブアース。
3,4コーナーの中間地点では身体をぶつけるようにサウンズオブアースにプレッシャーをかける姿も。これが直接の敗因ではないですが、終始自由が少な目でした。

かなり粗い絵になった4コーナーです。
この秋は4コーナーがイマイチでした。遠いしね。500mはさすがに馬がいくら大きくても難しいです。
でも何となく分かるのが競馬のいい所。

4コーナーでカプリもサンダリングブルーも手が動いてついていけない様子。
やはりもっとスピードのある馬でないと、ここまでの高速ジャパンカップでは苦しい。この2頭にとっては辛い遠征となってしまいました。

サウンズオブアースに鞭が入り、外が開けた赤い帽子のサトノダイヤモンドも外に持ち出します。
一方で、キセキの後ろでじっとしているアーモンドアイ。4コーナーまでロスなくしっかりとついていきました。
ガンコも脱落し、ノーブルマーズも苦しそうというのもあり、スワーヴリチャードも内からスッとアーモンドアイの1頭外へ。

まだ遠い油絵みたくなっています。

直線入り口からは「よし!スワーヴリチャード来い!」と応援していました。
外からスーッとサトノダイヤモンドがいい感じで上がってきたのもあり、ここからアーモンドアイに襲い掛かるだろうと。

逃げるキセキの後ろを、何も手も動かさず、じっと待っていたアーモンドアイ。「まさか…そこまで…」という気分になったのはもう少し後。

力の差が明確に出たので、あまり後方組で見るべき馬はいませんでしたが、ハッピーグリンは1頭頑張っていました。
直線右鞭で外へ行くという一杯一杯の走りには見えましたが、この7着は素晴らしい。
サトノクラウンにカプリに先着したのですから。
次はどこかのG3に出て人気して負けそうな気配がありますが、それでもこの7着は可能性を感じさせます。オジュウチョウサンとか。真面目に期待してますし。

後はミッキースワローでしょうね。
あれだけ後方から追い込むということしかできない上に、ベロを滅茶苦茶出しながら走ってサトノダイヤモンドを差し切る上がり33.9の豪脚。
こういう馬なのでしょうがないのは分かるものの、なんとかもう少し器用に走ってくれよという位。
セントライト記念ではアルアインを並ぶ事無く差し切った末脚は見事でしたし、得意の中山で一発!の期待十分でしたが、如何せん道中が後ろ過ぎます。
ロスの多い競馬でしたので、評価されそうでしにくい負け方でした。有馬記念出てきてほしいですね。かなり穴っぽいです。でも6番人気位になっちゃうかな。

カプリにしてもサンダリングブルーにしても後方のまま。
サトノクラウンと5馬身差あり、この差はこの競馬場では埋めるのは不可能でしょう。
やはり2400mではあるものの、変な話ハッピーグリンがあそこまで走れているのを見ると、向いているのは2400mでは長いタイプ。それこそ怪我して引退でしたがサクソンウォリアーとか2000m位のスピード馬をスカウトしてほしいです。
追走に苦戦していましたし、上がりもあの位置で35.0を切れないようでは東京競馬場では出番なしでした。

キセキは止まらずに逃げます。
スワーヴリチャードも頑張っていますが、前との差が詰まる所か差が開きだしました。

シュヴァルグランも4着で昨年くらい走っていそうな気配はありますが、この馬にしては時計が早過ぎたのかな。
3200mでキタサンブラックを3:12.7で追い詰めた実績はあれど、ここまでだとステイヤータイプだと少し向かなかったかな。
サトノダイヤモンドに1回は前に出られたものの差し返して突き放していますし、ゴール前までしっかり追ってスワーヴリチャードにも肉薄しています。
力は見せましたが、昨年に比べて王道のレースをして、この舞台では完敗ですが、スタミナはまだまだ健在です。
4コーナーでの反応が悪く、サトノダイヤモンドに前に行かれているように、もう少しシュンと反応してくれないとなかなかこういうレースだと厳しいですね。

そのサトノダイヤモンドは一度は3番手も?と思ったら、あらら失速の6着。
スタートの位置取りもやや消極的でしたし、4コーナーでの反応は良かったものの、直線半ばで完全に止まってしまいました。
時計だけ見れば2:21.9で走っていますので、よくやったなのですが、1.3秒負けています。
調教もラスト1Fの反応も良く見えましたし、パドックの雰囲気も随分と良い頃に戻ってきた印象でしたが、最後の止まり方を見ると…。
この血統です。大切にすべきなのは確かで、この敗戦で「引退」の文字も見えなくもない走りだったように感じました。好きなだけに寂しいですが。

逃げ粘るキセキを捕えるアーモンドアイ。
この辺りで、カメラを構えながらどうすべきか一瞬で判断を求められました。

それはあまり「先頭の馬をズームにしたくない」という思いがあります。特にG1だと。
やはりある程度動きを見るには、なるべく多くの馬を入れておきたい気持ちがあります。

「もう無理。これ以上スワーヴリチャード以下を入れても意味ない。」と判断したのがこの辺。
スワーヴリチャードの4コーナーまでの動きから、まさかフレームから外すしかないという決断になるとは思いませんでした。
それだけ前の2頭が特筆したパフォーマンスだったと言わざるを得ません。

そのスワーヴリチャードは少しかかり気味のシーンこそあれ、スタートから内に入れるタイミングも良かったですし、4コーナーまでアーモンドアイの真後ろをじっくり。
直線でバテたノーブルマーズの横をロスなく走り、直線追いかけるだけというシュチュエーション。
それでもアーモンドアイには一方的に突き放され、キセキにも並べず。キセキから3馬身半の3着。
よく頑張っていますし、天皇賞の敗戦はただの出遅れというのが分かるレースではありましたが、一定以上のスピード勝負だと苦しかったですかね。
有馬記念も走って欲しい。昨年は外枠で大外走って4着でしたが、昨年とは馬も違います。右回り云々もそこまで言われまい。大阪杯勝ってるんだし。
高速ジャパンカップに関しては完敗。でもしっかり3着を確保するのは一流馬です。

最後は2頭のマッチレース。
ただ、並んだのはほんの僅かでした。

キセキは本当に良く走っています。
レース運びは完璧と言っていいですし、1:11.7-1:09.2と後半1200mで1:10.0を切るレースをしていますので、差される方がどうかしていて、スワーヴリチャード以下の反応が普通です。
この秋大きくモデルチェンジをし、「先行馬キセキ」としての真骨頂を見せてもらいました。
これで負けちゃうんだねー。
今回に関しては枠順も馬場も全てがこの馬以上に揃った馬がいたとするしかないです。
抜かれてからも再度手前を替えて踏ん張った姿はクラシックホースの意地を見ました。
ゴール直前、川田騎手の視線がアーモンドアイに注がれていました。「強えなー」って思ってのことなのかな。そりゃ思わず見るわな。止まってない馬を並ぶ間もなく交わしてどんどん離すんだもの。

この世代のクラシックホースは良く頑張っています。
アルアインもマイルCSで頑張りましたし、キセキもこの走り。有馬記念ではレイデオロが待ち構えています。

西日を一杯に浴びてアーモンドアイです。

とんでもない馬でしたね。
自分は展開予想で以下の様に書いています。

第38回ジャパンカップ 展開予想(と3歳牝馬の挑戦とアーモンドアイ)

2018.11.22

ただ、勝てないレースとなる想像も容易にできます。消去法まではいきませんが、力強いド本命か?となると、そこまでではありません。
もっとロングスパート勝負になると最後甘くなるでしょうし。昨年のレイデオロみたいな2着やウオッカの4着のようなシーンも考えられます。
ま、単勝1倍台はやり過ぎですが、1番人気には相応しいですね。

単勝1倍台は全然やり過ぎでもなかったですし、これで勝てないレースって何?説明してみ?
と、これを書いた自分を正座させて小一時間説教したい気分。
背筋が凍ったと冒頭書きましたが、残り200mからの走りは「マジか?」と。スワーヴリチャードが自分のカメラからフレームアウトする事になるとは思いませんでした。

それなりに競馬を見てますし、ある程度力関係は把握しているつもりです。
4コーナーの位置とペースを考えて、スワーヴリチャードが勝ち馬から5馬身以上離されるとはとても想像できませんでした。
どんどん後続を離して行くアーモンドアイを見て、「世界にはこんな馬もいるんだ」と改めて感じました。

母フサイチパンドラはこのレース5着でしたが、娘はあっさりと制覇。
父ロードカナロアは先週のマイルCSに引き続いてのG1勝利ですし、この後の京阪杯もダノンスマッシュで勝利。
飛ぶ鳥を落とす勢いとはこのことです。株価があれば毎週の様に上がっていることでしょうね。

エネイブルは来年も現役続行予定です。
シーオブクラスもいますし、凱旋門賞ワンツーに加え、BCターフもマジカルが2着で牝馬のワンツー。
豪州はウィンクスがおり、日本にはアーモンドアイ。
世界中の芝中距離トップが牝馬で固まっているような気がしてなりません。

凱旋門賞のオッズにも今年のワンツーに次いでブックメーカーでは名前が出てきました。

勝ち時計が2:20.6。
ダビスタとかウイニングポストの領域に踏み込みました。
サイキョウクラウドとかこれ位で走ってなかったっけ?もう少し遅い位かも。

時計自体はこの馬場で、ペースを考えればレコード近い決着にはアーモンドアイいるいないに関わらずなってそうですので、上位陣ならレコードは出せたかなと思います。
ただ、1着でゴールした馬がレコードホルダーです。
アーモンドアイは相応しい勝ち方でしたし、そのレースに出走したというのはこの馬が特別であるという何かがあるのかもしれませんね。

ウイニングランならぬウイニングウォークのアーモンドアイ。

名前の通り本当に綺麗な目をしています。
疲れたのか終わってボーっとしているのか、レース前に歓声に少しナイーブになっていた馬とは思えない仕草。
耳も目もほぼ動かず、ファンの歓声に動じることなくテクテクと歩いてきました。
「溜めこんだエネルギーをさっき爆発して来た、もう残ってない」。そんな雰囲気。

年度代表馬は決まり。
目は来年ですね。

この走りでこの馬の上限が全く分からなくなりましたので、どこを目標にするのか楽しみにしたいです。




3 件のコメント

  • 自分も現地で観戦できました!
    本当に素晴らしいレースでしたね
    まさに力勝負!
    全馬が力を出し切ったレースでした
    自分としては、ゴール後に放心状態になったような感覚は、ウオッカの勝った天皇賞以来です
    頑張った馬たちに”ありがとう”と言いたい

  • いつもすてきな観戦記、ありがとうございます。

    素晴らしいジャパンカップでした。テレビ観戦ながら、「良いものを見せてもらった」という余韻がしばらく続きました。ルメール・ジョッキーの騎乗はお見事としか言いようがありません。去年のダービーでのレイデオロといい、レース展開に応じて臨機応変に対処できる彼ならでは騎乗でした。

    それにつけても思うのはアーモンドアイの両親のことです。父ロードカナロアはG1をとりあぐね、公営出身の騎手に乗り替わってスプリンターズステークスと香港スプリント2連覇を成し遂げ、G1を6勝して種牡馬への道をたどることができました。母フサイチパンドラもエリザベス女王杯こそ獲ったものの、ジャパンカップは5着。いずれも乗っていたのは今年の“ダービージョッキー”でした。もし当時ルメール騎手がいたらどれほどの戦績を残せたことでしょう。

    ルメール、デムーロの両外国人騎手がやってきて、ようやく日本競馬にも光明が見え始めました。こんな胸躍るレースをこれからも観ていきたいものです。

  • 更新お疲れ様です。

    サイキョウクラウドの名がここで出ますか(笑)

    ヌレイエフのクロスが効いてるんですかね(笑)

    もう、ジャパンカップは走破タイムが現実離れしていて混乱しています。

  • Leave a Reply

    Your email address will not be published. Required fields are marked *