第80回皐月賞 レース回顧




第80回皐月賞(G1・中山・芝2000m・稍重)

前日の大雨から一気に回復し、素晴らしい青空でした。
午前中乗馬行ってきて、馬場の回復具合をイメージしてきましたが、やはり前日の雨が多かったのと、少し長かったですね。
良馬場まで戻るかな?という予想でしたが、無念の稍重。この程度も当たらないのではレースで18頭もいて当たる訳ないな。

皐月賞は自分の中では一番好きなレースです。
写真的にも光の具合が丁度良く、素人でも素敵に撮れます。とはいえ無観客なので今年は仕方ない。

馬場は稍重。
鹿野山特別はスローペース過ぎて参考しにくい2:03.0。
とはいえ外差しが目立ちましたので、内で粘るよりは外の方が可能性がありそうな気配。
その前の隅田川特別も外からアヴィオールが差していますし、内埒沿いは昨日の雨も加わって悪そうです。
+1.5秒位みておけばいいかな。

パドックではコントレイル、サリオス、サトノフラッグ共々いい感じです。全体的にピカピカ。
皐月賞ですから。いきなりスゲー太って出てきたみたいな馬はいません。

アンタレスSではベストタッチダウンが大きく下位に沈み、Win5では1番人気勝利無しの皐月賞です。ま、買ってないからいいけど。

ファンの歓声の無い中、ゲートイン。で、スタート。
コントレイル、サリオス、サトノフラッグはいいスタートでしたが、キメラヴェリテにぶつけられるように1歩下がったダーリントンホール。
自分はダーリントンホールを対抗としていただけに注目していましたが、「あ!」と思わず声が出ました。ダーリントンホールももう少し出が良ければまた違ったかもしれませんが、脚質的には苦しくなりました。

コントレイルは内で下げて中団より後ろへ。
馬場を考えたら最後まで内で出られないよりは下げてでも外ということでしょう。思い切ったいい作戦です。

サリオスはきっちりと好スタートからウインカーネリアンの後ろを。折り合いもついていますし、無理をしてポジションを取りに行った訳でもなく、自然と3番手辺りに収まりました。
外からビターエンダー、ヴェルトライゼンデ、ラインベックも前に行きましたが、真ん中の枠の連中がこぞって下げているのもあり、そこまでプレッシャーもなく1コーナーへ。

コントレイルに関しては、後ろが大きくスペースがあったので、下げやすかったですね。
レクセランスがスタートからスピードの乗りが悪いのもあり、サトノフラッグを斜めに見ながら1コーナーへ。少しだけクビを上げる場面もありましたが、ちょっと詰まっただけです。

キメラヴェリテが先頭で2コーナーへ。
最初の600mが35.6。馬場考えれば極々普通。よくある数字。
参考までにエポカドーロの時が35.5、ゴールドシップの時が35.8、ヴィクトワールピサの時が35.4。

ウインカーネリアンが離れた2番手。
ビターエンダーが外、ディープボンドが内。

サリオスが5番手で前を見る形になり、ラインベックにテンピン、ヴェルトライゼンデと続きます。
その後ろにサトノフラッグ、内にコルテジア。この辺りが中団です。
内にいるコントレイルとそれを塞ぐ形になっているガロアクリーク。その外からマイラプソディ。

コントレイルの斜め後ろにダーリントンホール。内にレクセランス。
追い込み勢のアメリカンシードとクリスタルブラック、ブラックホールと続きます。

ペースは向正面で少し落ち着き1000m通過後に12.9というラップが刻まれます。
特に近年淀みなく流れる皐月賞としてはやや珍しいですね。あまり見たことがありません。1000m通過後に一気に馬群が凝縮していきました。

コントレイルがどのようにして外に出したのか?というのはパトロールビデオを見ると面白いですね。
先に動いたのは1つ前の隊列の一番外にいたマイラプソディ。
コントレイルとしては外の斜め前にスペースができました。
コントレイルが徐々に外に持ち出していきながらコーナーに入ったため、コーナーに入った瞬間ではガロアクリークより外に。その結果コーナーワークで少し前と離されてしまいましたが、前にスペースができました。
ずっと外を張っていたダーリントンホールも同じようにコーナーワークでコントレイルから半馬身程度遅れたタイミングで先に仕掛け、走路を外に確保していきました。

マイラプソディがもう少し待っていたら?ダーリントンホールの動きがもう少し良ければ?
まぁ後者は馬の力だから仕方ないにしろ、マイラプソディは恐らく4コーナーでの動きの悪さもあり、武豊騎手は早めに動いたのでは?と推測しています。
もっと切れるという自信があれば、ガロアクリーク位待っていたかもしれません。そうなったらコントレイルは包まれて終わりだったかも。まぁあれだけ脚が違えば出てきたとは思いますが。

直線入り口にかけて大外からコントレイルが一気に来た時、こりゃ勝ったと思ったものです。それ位の勢いでした。その前を弥生賞の再現を狙うサトノフラッグ。
ウインカーネリアンも手応えを感じましたが、サリオスもさすがの反応。
ヴェルトライゼンデが離されまいと内へ内へ進路を取っている中、悠々と離していきました。

直線はサリオス対コントレイルの一騎打ち。
ウインカーネリアンを挟んで並んだのも束の間。坂を駆け上がってからウインカーネリアンが一気に離され、サトノフラッグも一杯になり、内でヴェルトライゼンデ、コルテジア辺りも僅かに出ていましたが、そんなのは全く関係ない前2頭。

コントレイルが半馬身差差し切っての勝利でした。マッチレース、いい絵が撮れただろうに。見たかったなー。
これで2年連続ホープフルSからぶっつけでの皐月賞制覇。
サリオスもぶっつけ。朝日杯の勝ち馬が皐月賞で連対するのはロゴタイプ以来ですね。もはやトライアルなんて…という流れになりつつあります。桜花賞のデアリングタクトもそんな感じですし。

勝ち時計の2:00.7はそこまで「素晴らしい」というものではないですが、馬場を考えれば上々です。
コントレイルの上がり34.9というのは稍重皐月賞ではほぼ見ない数字です。
稍重皐月賞で4コーナー10番手以内で通過して35.0を切ったのはゴールドシップただ1頭です。しかもあやつは内を通ったしな。

誰が見てもコントレイルとサリオスの2頭の力が抜けています。
ダービーは2400mですが、将来的に古馬2000m戦で走れそうだなという位の馬なら十分持ちます。
サリオスはもっとかかってしまうかと思いましたが、騎手の腕もあるにしろ全然問題ありませんでした。

コントレイルは高速馬場の東京は東スポ杯の1:45.0切りという古馬重賞でもなかなかできない芸当で走れています。あれだけで合格です。崩れる可能性は不良馬場位なもんでしょう。
4コーナーでダーリントンホールを置き去りにした加速の鋭さもそうですし、ゴールに向かうにつれて本当に僅かではありますがサリオスとの差を広げ続けたのも好印象しかありません。
サリオスは当然逆転の可能性はありますが、それ以外の皐月賞組となると…ですね。

そのサリオスは好スタートから5番手。内でこちらはジックリ乗って、ウインカーネリアンを外に押し出しながら最後は競り負ける感じの2着。
相当強いですし、この位の走りができればダービーなら誤魔化せるはずです。
同じ距離のジャパンカップだと苦戦すると思いますが、同年代の高速決着という条件付きなら逆転の可能性は十分あると思いました。
とはいえ最後30m位の差ではありますが、徐々に離されたのを見ると、2400mになってプラスには大きくはならないので、打倒コントレイルという意味では何か1つ、白帽子でも欲しい。

ガロアクリークもキンシャサノキセキ産駒として甘く見ていた訳ではないけど買っていませんでした。無念です。
マイラプソディを先に行かせ、向こうが手応えが悪いと見るや一気に前に行き、最後まで頑張って3着。
これは完全に好みの問題ですが、走り方がグーンと加速する走りに見えないので、ダービーはどうかなぁというのが正直な感想。

サトノフラッグは最後疲れてしまったように失速して5着。
弥生賞では問題にしなかったウインカーネリアンを交わせなかった訳ですし、やや物足りない敗戦でした。
仕掛けにしてもコントレイルより前の内を走って同じような感じで直線ですので、言い訳しにくい負け方です。
ダービー3着候補から脱落ではないものの、勝利となると3つくらいの運が必要ですね。

ダーリントンホールは期待したもののスタートでの後手が結果的に最後まで響いて6着。
デムーロ騎手は隅田川特別でも1.4倍のゲバラで出遅れて負けていますし、メインもスタートが決まりませんでした。まぁこちらはキメラヴェリテに寄せられたという不運もありましたが。
負けたものの上がり36.0を切っていますので、こちらも3着候補としては脱落していません。
4コーナーの反応の悪さを見ると、中山はどちらにしても無理だったかな。

コルテジアも期待したものの、思った所と違うところにいての7着。
内から一瞬だけ顔が見えて「お?」って期待したのは一瞬だけ。レースとしては不完全燃焼でしたかね。それでもヴェルトライゼンデには先着しているので、立派です。
ダービーでも距離云々は問題ないはずですが、タイプ的にはNHKマイルカップっぽい。

ヴェルトライゼンデも内を選択して8着。
外回して勝てる馬じゃないと予想でも書いた通り、内を狙うのは間違いではないです。ただ、この皐月賞は内は辛かった。
距離延長はプラスのハズ。どうせ人気も下がるだろうし、内を突けるというのはダービーでは強みです。積極的に狙いたい3着候補。

他は厳しいかな。
マイラプソディは京都2歳Sの時とは別馬のようにストライドが崩れていますので、この春は厳しい。立て直したほうがいいと思います。
京都で走らせて自信をつけさせないと、このまま終わるかな。

 

コントレイルはこれで4戦無敗でダービーへ向かいます。
ディープインパクトで母系にはアンブライドルズソング。
早熟性、スピードは十分証明できていますので、後継種牡馬としてだけでなく、最高傑作になれるかはダービーにかかっています。

ちなみに、稍重皐月賞馬はダービーではなかなか苦戦しております。
グレード制実施後、勝ち馬は以下のようになっています。

  • 1985年 ミホシンザン ダービー出走なし
  • 1991年 トウカイテイオー 1着
  • 1995年 ジェニュイン 2着(皐月賞2着のタヤスツヨシに負け)
  • 2000年 エアシャカール 2着(皐月未出走のアグネスフライトに負け)
  • 2010年 ヴィクトワールピサ 3着(皐月賞3着のエイシンフラッシュに負け)
  • 2012年 ゴールドシップ 4着(皐月賞3着のディープブリランテに負け)
  • 2018年 エポカドーロ 2着(皐月賞7着のワグネリアンに負け)

エポカドーロはさておき、ダービー後もきちんとG1を勝利している馬達が並んでいます。それでもダービーは負けてしまいました。
ま、トウカイテイオーという天才はいますが、このあと一歩感は稍重の皐月賞と良馬場のダービーとで求められる能力が微妙に違うということもあるかな。
ゴールドシップやエポカドーロ、ヴィクトワールピサは切れ負けと言っていい負け方ですからね。

青葉賞でペルーサやアドミラブル位のハイパフォーマンスで勝ってきてくれる馬が出てくると面白いんですけどね。
そりゃ贅沢か。

ダービーはコントレイルとサリオスの走りが生で見られればいいけど、、、こちらも甘くないですね。