馬場論争について思うこと

海外に競走馬が遠征して大敗すると、、、

JRAが芝のクッション性を公開するということで、随分前に書こうとしていたメモを肉付けして書いてみました。

振り返ると1/31にこのような記事が出ていました。
世界でプラスにならない日本のきれいな馬場 アエロリット ペガサスWCターフ9着

馬場論争は果てしない長い闘いが続いています。
この文章では以下のように書かれています。

きれいな馬場で走り慣れた日本馬が、タフな馬場への適性で海外の馬に勝る道理がない。馬場管理の質の高さが、日本馬の海外での好走条件を狭める要因になってしまっているように思えてならない。

ジャパンカップ直前だったり、凱旋門賞で負けたりすると大体似たような論調の記事やらコメントやらで埋め尽くされます。

いかにも「自分は外の世界も知っている。日本は間違っている。」的なイイコトを指摘しているようですが、非常に無責任だと感じてしまいます。
というか、毎回こういう記事を見ると思うのは、「あなたの基準(ベスト)となる馬場はどこなの?」ということ。

ここが明確に定められていないから毎回議論が収束しないし、好き勝手言っているだけになっています。
記者なら例えば以下のように明確に宣言すべきです。
「私の基準馬場は○○の○○競馬場です。2400mのG1であれば、2:26.0を超える決着にならなければなりません」とか。

これが無いからわからない。
この人の言う「海外」ってどこ?どこで勝てばいいの?
問題提起するのはいいけど、どこに合わせるのがベストなのか言ってくれないと分からない。

自分は東京競馬場の馬場はとても綺麗で、芝丈も長く、クッション性もあるのでこのままで良いと思っています。
馬場開放で歩くと分かりますが、本当にフワフワ。芝コースから出てコンクリートを歩くと違和感を感じます。
海外ではメイダンでも勝ててますし、香港でも勝てています。十分だな。

フランスで勝ててないのは「欧州随一のレースである凱旋門賞だから」であり、低レベルのG1であれば、特に問題なく勝ち負けになるでしょう。
イスパーン賞とか行ってみればいいのよ。エイシンヒカリがぶっちぎったのは別に不思議でも何ともない。
少頭数ということもあり多くの馬が好勝負するでしょうし、サンタラリ賞辺りならフローラSの勝ち馬位が遠征に耐えることができれば勝てると思いますよ。

ぶっちゃけ凱旋門賞で負けても仕方ないと思っています。
世界のトップクラス同士が1回だけ戦うレースで100%勝つなんてあり得ないし、そんなのは幾度となく見てきています。サッカーのワールドカップだってそうだし。

 

一体何秒ならOKなのよ?

アーモンドアイが昨年のジャパンカップで2:20.6という時計を出した時も似たような感じになりました。
確かにスーパーレコードですが、天皇賞秋の時ってどこまでそういう話になっていましたっけ?

ラップを見ればわかりますが、2000m通過で言えば1:57.2です。
そこからラスト11.4-12.0で駆け抜けたので、この時計が出ましたが、天皇賞の勝ち時計は1:56.8です。

レイデオロがその後2Fをどのくらいの時計で走れるか?はやってみないと分からないものの、12.0-12.0でまとめられれば2:20.8。
あまり非現実的な話ではなく、キセキがあれだけ引っ張れば天皇賞上位陣なら天皇賞の時点の馬場で出てもおかしくありませんでした。

だから大したことないということではなく、レコード決着のインパクトは強烈だったものの、天皇賞秋だって十分すぎるほどの高速決着。
ニュースを振り返ると、そこまで言及している記事もなく、静かです。

 

その天皇賞の勝ち馬であるレイデオロのダービー。
ルックトゥワイスが同日の青嵐賞で2:23.8という時計が出る程の高速馬場でしたが、途中で遅いラップが入ったこともあり勝ち時計2:26.9。

こういうレースだったらどうなんでしょうか?
ラストは11.5-10.9-11.4と高速フィニッシュであり、アーモンドアイのジャパンカップを凌ぎます。

時計が遅ければOKなら、これはOK?
ジャパンカップがこういうレースだったら馬場は言われないのか?と思います。

従って、きちんと明確にするにはもう少し条件が必要です。
「私の基準馬場は○○の○○競馬場です。2400mのG1であれば、前半1000mが60.0で走れた場合、2:26.0を超える決着にならなければなりません」

位まで明確にしてほしい。
そのうえで批判記事を書かないと、話が噛み合わないし、この人はどこを見ているのか?が全く分からない。

例えば昨年のメイダンでのドバイシーマクラシックなんかは典型的なスローの上り勝負。
勝ったホークビルの1400m通過が1:31.29で2400m通過が2:28.80。
ラスト1000mを57.51という高速フィニッシュでした。

レイデオロのダービーは12.6+12.7+11.5+10.9+11.4=59.1。
時計だけで比較するのは非常に難しいですが、それでも「どこ」という基準がないと問題提起するにも漠然としすぎます。

 

日本の馬場はガラパゴス?

よーく言われます。

日本だけで独自の進化を遂げた場合、ガラパゴスと言われてしまいます。
その逆は(明確に逆ではないとは思うけど)「デファクトスタンダード」でしょうか。

確かにビジネスの場ではガラパゴス化が進んでいるものも多いと思います。
携帯電話は外部から適応性、生存能力の高い種が導入された結果、日本独自種は淘汰され、数社残っているものの絶滅寸前の状態に追い詰められていますし。
もはやOSはほぼandroidとiOSですからね。

そんな中、JRAが芝のクッション性を公表するらしいという記事が出ました。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190304-00000158-sph-horse

「芝の馬場で70から90G」とのこと。

「ははーん、なるほど。それ位かー」という人はほぼいないと思いますが、ちゃんと競馬ファンなら覚えておきましょう。
「オレ、競馬知ってるぜ」的な人ならこの程度の論文の存在位知らなくてどうする。

引用:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5048355/

前提が「The data were collected in 1995−1996 outside of the racing season.」なので、シーズン中ではない+馬場の外側だったと思います。
また、各国のデータも古く引用すると以下の通りです。今はまた違う値でしょうが、概ね傾向はつかめると思います。

The JRA conducted a survey of track conditions by using the track hardness measuring van mentioned above at nine racecourses in Europe and North America during the period of 1992 to 1997 and outside of the racing season

1995年付近の東京競馬場は(測定の機械は全然違うと思うけど…)130G位でした。
それを知っていれば、「随分下がった」と思うでしょう。

シャンティイやサンクルー、ロンシャンといったフランスも馬場は硬めです。北米の時計が出る競馬場でお馴染みのサンタアニタもグラフは出っ張っています。
当然100Gを超えていた当時は「日本の馬場は…」と数字を見せられてしまえば納得ですが、少なくともこの数字がウソでなければ、大体世界中こんなもん。
ニューマーケットが緩いですね。英国は馬場がガラパゴス過ぎて…。今もそうだけど。

数字だけ見ればそりゃそうです。走るのにある程度の硬さは必要で、緩いほうが怪我します。
乗馬でも雨の日とか「馬が怪我する」という理由で回避しますもの。お天気で馬場がしっかりしている方が基本的には怪我は少ないです。人間でもそうですけどね。走ったら路面が緩いほうが怪我する可能性が高いでしょ。ある程度路面がしっかりしていることが怪我を防ぐためには重要です。

また、芝の長さも日本は長い印象です。

一番いい時期ではありますが、去年のフローラSです。
整備している方の足首がスッポリ隠れます。

では、海外に行きましょう。
ドバイはメイダン競馬場。2014年です。ジャスタウェイが好時計でぶっちぎった年。
足首がこちらも隠れますので、気持ち長めかな。

続いて、改修前のロンシャンです。こちらも2014年。
ブーツの足首が隠れているかどうか?ですので、割と短め。
これはゴールから200m付近の馬場の真ん中より外側位ですので、そこまで長いという印象はありません。実際見てもそう思いましたし。

続いて2017年のシャンティイです。フランス。
若干見えにくいですが、革靴の感じから大体の長さは分かると思います。気持ち短め。しっかりと刈られている印象でした。

いやいや、日本だけ5月だとアンフェアだ!と思いますが、綺麗な5月は写真があれど、あんまりないのよ。天皇賞の時期とか。
こんなのとか。。。完全にネタですね。これ、芝の長さとかわからんし。
でも、腕の感じとかを見れば、シャンティイやロンシャンに比べて少なくとも短い印象はありません。

「日本は芝が短い」という意見もちらほらヤフコメとかで見ますが、そんな印象はありませんし、実際短くないです。
シャンティイはコースのすぐ横を歩きましたが、全く長いとは感じませんでした。

ガラパゴスには間違いないと思います。
ただ、それは各国がそうで、英国やアイルランドは文句なしにガラパゴスですし、フランスや北米も違います。
「ここと一緒」なんて簡単なものではないので、多少進化が異なっていたっていいと思います。
自分は今の日本の馬場は綺麗ですし、好きです。

 

怪我の割合ってどんなもの

これは本当に難しい。。。
ここで「ビシっと」言えればカッコいいのですが、そうは問屋が卸さない。
そもそも日本語の論文はほとんどありません。知らないだけか?

まず日本の昨年の報告から。
http://company.jra.jp/0000/management/target/target29_hyouka.pdf

競走における事故(骨折等)頭数は 803 頭(平成 28 年/789 頭)であり、出走頭数に占める比率は 1.63%(平成 28 年/1.58%)

出走延頭数 49,148 頭ですので、1000頭中のアクシデントは16.33。
この数字だけみると、各国の数字に比べてとんでもなく高いのは事実です。

各国の数字はこんな感じ。
Fracture incidence rates and the association of rest with bone remodelling in Thoroughbred racehorses at the Hong Kong Jockey Club」という論文から引用しています。
データは少し前の時代の数字です。
IRというのは、1000頭出走馬の内、インシデント発生割合です。
1.50というのは、1000頭で1.5頭にインシデントが発生した、というもの。この「インシデント」の重さが正直分かりません。

ここで、日本の数字がぶれまっくっているのが目につきます。
恐らく今のJRAの発表は当時の18.30と同じ発表の仕方。ここら辺はガラパゴスと言われても仕方ないな。こういうのはダメね~。
今のJRAももう少し細かく分類してくれればデータ補完して「馬場は大丈夫です!」と書けるけど、書きにくい。

この論文でも「日本は数え方が違うから…」と言われてるし。
日本の場合は鼻出血も入っているし、跛行、急性心不全も入っています(多分)。

上で紹介した論文では

The average incidence of catastrophic fractures leading to direct euthanasia at racetracks during or after races for a 10-year period (1985–1994) was 0.32 ± 0.07%. Most catastrophic fractures were limb fractures. There have been several reports on the incidence of catastrophic racing injuries from other countries. The incidence of catastrophic injuries during racing on flat courses was 0.29% (mainly musculoskeletal injury) in the U.K. In the U.S.A., the incidence of fatal musculoskeletal injuries was 0.14% in Kentucky and 0.17% in California, whereas it was 0.06% in Australia; the incidence of fatal injuries was 0.044% in Australia.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5048355/

とあります。

1985年–1994年の日本は0.32± 0.07%が重大事故の確率。少し前のデータですが、肌感覚だと多分この位の数字が正解。
英国が0.29%、アメリカのケンタッキーが0.14%、カリフォルニア(多分サンタアニタ)が0.17%。
オーストラリアはちょっとわからないですが、0.06%とも0.044%とも。

ちなみに、オーストラリアもどの数字が正しいのかわかりません。

参考:https://www.horseracingkills.com/wp-content/uploads/2018/11/DWFINAL-updated.pdf

2018年のレポートです。
35,000頭中119頭が死んでいるので、割合で言えば0.34%という発表もあります。
このあたりの数字はどれも正しいはずなのですが、どれが正しいとは言えない難しさ。

ちなみに、ロンジンが出しているレポートがこれ。
http://jockeyclub.com/pdfs/eid_9_year_tables.pdf

興味深いと思いますが、基本は芝よりダートの方が事故が多いです。
芝とダートでは逆転したことは1回もなく、怪我しにくいという印象はあると思いますが、データはそうなっていません。

もう少しだけでもいいからJRAはデータを細かく公開するか、APIでも作ってくれれば適当に問い合わせてデータ取るものの、そうなっていないのは困りもの。

自分でやるしかないです。
フェルミ推定になりますが、2月2日~3月3日までの10週で骨折及び予後不良は「開催競馬場・今日の出来事」から拾うと9頭(後に追記があったもの含め)。
360レースで、1レースの出走馬は昨年の平均である49148頭÷3455レース=14.2頭。切り捨てて14頭で計算。
14頭×360レース=延べ5040頭。
重大事故の割合としては9事例/5040頭=0.178%。

大きく外れてはいない気がします。感覚的な問題ですけど。ロンジンの数字は何を数えているか分かればもう少し調べられるかもしれないけど…。
各国色々と研究してその結果を公開していますので、暇でしょうがないときに見たらいいと思うよ。

 

馬場論争で思うこと

こういうのが出ると、必ず以下のような意見が出ます。
ヤフコメに書いてるんだから、引用したっていいでしょ。

欧州遠征前提みたいな意見はどうなのよ?と。
なんで日本の馬がわざわざ欧州遠征するのを第一に考えなければならないのかがわからない。

意見としてそう思う人がいることは否定しないけど、「ちょっと違うんじゃないの?」と。

海外遠征で言えばドバイでも香港でも好成績が出ている以上、それ以上求める必要はないと思っています。
ジャパンカップでもきちんと強い馬が来たら悪くない成績を残していますし、例えばカプリとかでは海外遠征して勝ち切るだけの力がなかったというべきでしょう。

現にジャパンカップの好時計勝ちは外国馬だっています。
ホーリックスもそうだし、当然アルカセットも。ベタールースンアップも2:23.2の好時計でした。シングスピールも2:23.8ですね。
本当に強い馬はそこまで大崩れしていません。欧州からジャパンカップで負けるのは馬場ではなく力の問題が大きい。
日本→欧州も欧州→日本も同じ。

ドバイの後でアーモンドアイが負けたりしたら似たような話が出てくると思いますが、その時は「自分はこの馬場でこの時計で走れる馬場がスタンダードと定義する」と立場を明確にしてから書き込んでくれると、少しはいいんですけどね。
漠然と「だから日本の馬場は…」的な意見は、少なくとも自分は悪くないと思っているだけに、なんだかなーって。

今回70G~90Gみたいな数字は、一競馬ファンとして予想には全く使えないけど、そういうデータがあることを認識しておくことも良いかなと思います。
感覚だけだと延々に終わらないから、JRAはもう少し細かいデータを出してくれるとブログ書くには助かるなとも思いました。

2 件のコメント

  • おっしゃる通り凱旋門賞で勝ち負けするのは馬場の違いよりも絶対能力の差であるとのご見解は一理も二理もあると思います。ただ私もタイム計測をして申し上げているわけではありませんが府中とロンシャンでは相当違う競馬場であるとは思っています。第一に高低差です3.4mの府中に対しておよそ10mはあろうかというロンシャンでは当然馬によっての適性差があることは間違いないと思っています。時々私も馬場論争に僭越ながら一言申し上げることもあるのですがひとつぐらい日本にも欧州タイプというかロンシャンに近い競馬場をつくってもよいのでは?それがひては凱旋門賞はじめ欧州の遠征の成果に貢献するのではと思いコメントするのですがかなり反対意見の方も多いですね。ドバイや香港で結果がでているから凱旋門賞は負けてもしょうがないと言ってしまえばそれまでですが私もシリウスシンボリのフォア賞や凱旋門賞の頃から応援しているいちファンとして凱旋門賞やキングジョージで日本の調教馬が勝つ姿を見てみたいと長年夢見て来ました。サークル内でも凱旋門賞制覇はいわば悲願のように足掛け50年にわたって挑戦し続けいまだ達成していないのです。エイシンヒカリの激走は私もたまげましたしコース形態など関係ないのかとびっくりしましたがロイヤルアスコットではきっちり目標にされて最下位に沈んだあたりノーマークの漁夫の利だったゆえの勝利だったのではと思っています。それでも欧州という括りでのG1制覇はアグネスワールド以来で今世紀に入ってからは2着こそあるものの役20年に渡りエイシンヒカリ以外は勝てなかった現実もあらためて考えるべきではないでしょうか?今年アーモンドアイが順調なら凱旋門賞に出走する可能性が高くあるいはこの馬ならと久しぶりに期待が膨らんでおりますがさてどうでしょうか?ドバイを好走してガネー賞やイスパーン賞あたりを使って方向性を見出すのが良いと私は思いますが国枝さんも凱旋門賞を目標にするのにドバイターフを使うってことは12fの距離にいささか疑問があるのでは?と推察します。あくまでも個人的な見解ですがヨークのインターナショナルSやむしろ8fのムーランドロンシャン賞あたりのほうが適性があるのではと思っています。いずれにしてもアーモンドアイの遠征はとても興味深くそれこそ馬場論争の根拠になってくれると今から楽しみでしかたありません。きっと好成績をおさめてくれると信じておりますがもしまったく競馬にならないようならその時あらためて馬場論争の議論に参加させていただきたく存じます。

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