第155回天皇賞(春) レース回顧




第155回天皇賞(春)(G1・京都・芝3200m・良)

世間ではGWに突入し、今年は月火の2日休めば9連休が取れるということで、月火共にお休みという方も多いのではないでしょうか?
休める方は楽しくお休みした方が良いと思います。

今年も春が本格化してきて過ごしやすい季節になりました。
数えて155回目となる天皇賞。今年は2強を含む17頭がエントリー。
大阪杯のG1昇格もあり、メンバーが心配されていましたが、なんのなんの。さすがは長距離で世界最高のレーティングを叩き出すレースです。

予想はこちら。

第155回天皇賞(春) 展開予想

2017.04.28

馬場は軽いですね。天気が良いですし、芝もグングン育ちます。まぁ重要なのは芝の下ですが…。
古馬1000万下の1400m戦である鷹ケ峰特別で1:20.0、3歳500万下のスプリント戦で1:08.3。
やればどこまででも出るとまでは言いませんが、それに近い状態だと思います。

ラブラドライトが16kgも増やしてきましたが、それ以外は微々たるもの。
汗やご飯を食べたタイミング、トイレのタイミング1つで変わる程度です。

パドックではキタサンブラック、サトノダイヤモンド、シャケトラが良いですね。
恐らく誰が見てもこの3頭は良く見えたのではないでしょうか。サトノダイヤモンドの周りを眺めつつ周回しているパドックの雰囲気は素晴らしい。
ゴールドアクターは昨年よりはマシという程度。
ディーマジェスティはJCより悪くないですが、もう少し後ろ脚がしっかりしていた気もしますが…。まだチョコチョコ歩いているんですよね。

返し馬はほとんど走り終わった後だったので全く分からず。

さて、レースです。

全体的にバラバラっとしたスタートになりました。
外のヤマカツライデンが好スタートを切り、キタサンブラック、サトノダイヤモンドもまずまず。
対して最内シャケトラにゴールドアクター、スピリッツミノルにレインボーラインなどが後手。
ディーマジェスティも手を必死に動かしていましたので、前に行かない感じでスタートから明暗が。

アドマイヤデウスやシュヴァルグランがいい位置を取る中、内からシャケトラがグイグイと。
遅れたのは仕方ないですが、これだけバタバタして3200mだと…ね。スタート20秒程度で頭を抱えた人が多かったと思います。

キタサンブラックは行きたそうな素振りを見せていたものの、最初のコーナー手前で1回フライングチェンジをしてから落ち着きました。あの辺はすごい。

サトノダイヤモンドは前走のように最初のコーナーで前に行きたそうな雰囲気も見せず、じっくりと。ほぼ同じスタートを切っているタマモベストプレイと1馬身後ろになるので、さすがに外枠だなと思いながら1周目の3コーナーの下り。

最初のホームストレッチでヤマカツラインではぶっ飛ばします。
驚きました。飛ばすかもと思っていましたが、ここまで飛ばすか。

35.6 – 58.3で1000mを通過。
そこからも全然落とさずに1400m通過が1:21.5。
鷹ケ峰特別のビリだったタガノガジュマルがまさにそのタイム。

最大で3秒位、向正面でも2秒程度はあったと思います。
大きなリードを保ちながら1コーナー~2コーナーへ入ります。

2番手にキタサンブラックで3番手内でアドマイヤデウスにワンアンドオンリー。
シュヴァルグランも積極的で内から落ち着きを取り戻した感じのシャケトラ。
その後ろ、キタサンブラックから5馬身位の位置にサトノダイヤモンド。

ファタモルガーナにアルバート、タマモベストプレイとトーセンバジルと続きます。
ラブラドライトにディーマジェスティが外から、間にゴールドアクターです。

少し離れてスプリッツミノル、プロレタリアトで最後方にレインボーラインという展開です。

向正面に入ってからペースが一旦緩みましたが、それはヤマカツライデンがそうしただけで、後はほとんど変わっていません。
道中もペースダウンは多少あったと思いますが、ヤマカツライデンにそこまで合わせた感じもせず、当然ですがキタサンブラックがペースを握っていました。

後方でディーマジェスティが少し促していたので、やはりいい頃と比較してしまうとどうでしょうかね。セントライト記念とか相手が違うとはいえ自在にペースの上げ下げができていたように見えたので、その辺りが走る気持ちに十分整っていないのかなと感じました。

レインボーラインは後方で溜めに溜める作戦。
馬場を考えると待ち過ぎでしょうが、下手に動くよりは、という位かな。
実際どこで動けたか?と考えると、ほとんど動ける場面がありませんでした。
馬場も含め、後方組が差を詰めるタイミングもなければスタミナを十分に蓄えるだけのペースでもありません。

レースそのものもどんなレースだったのかを考えてみます。
参考までにディープとビートブラックの3:14.0を切った馬での比較です。

  • キタサンブラックの全体:46.9 – 47.6 – 50.3 – 47.7
  • キタサンブラック(推定): 48.5 – 48.5 – 48.8 – 46.7
  • ディープインパクトの時:48.1 – 49.6 – 50.9 – 44.8
  • ビートブラックの時:47.6 – 48.9 – 49.4 – 47.9

多分こんなもんか。2400m通過がキタサンブラックが2:25.8位だったので、そこからの逆算です。
だとしたら驚異的にもほどがありますが、恐らくこれ位に近いはず。
ディープの時は中弛みもあり、最後800mは驚きの45秒切りでしたが、今年はそれよりもスタミナ勝負。

キタサンブラックはビートブラックの時にビートブラックが刻んだペースに近いはず。ビートブラックの時は2400m通過が2:25.9。ほぼ互角。
そこからラストがビートブラックは12.3 -12.5と落としましたが、そこで11.7 -12.2 と踏ん張ったのでこんな時計に。

4コーナーでディーマジェスティがサトノダイヤモンドに並びかけようとしたのはなんか良かったです。道中は全体的にイマイチでしたが、菊花賞の時もそうだったし、頑張ろうとしたのかな。

サトノダイヤモンドとしては、前のシュヴァルグランもそうですし、その前にいたワンアンドオンリーでしょう。ワンアンドオンリーを交わすためにスッと僅かに外に出して完全に前をふさいだシュヴァルグラン。
そしてワンアンドオンリー下がりながら外に膨れたため、サトノダイヤモンドとしてはシャケトラに内に入られ、1頭外を回されました。直線であれだけシュヴァルグランと馬体が離れてしまう位外回されると、今日の馬場だと苦しいと言わざるを得ません。

直線はキタサンブラックが突き放します。
切れ味という点では劣る馬はいても、こういう肝心な勝負所でペースが落ちずにきっちり走れる強さは脱帽せざるを得ません。

シュヴァルグラン、アドマイヤデウスも頑張っていて、外からサトノダイヤモンドが追いかけますが差が詰まりません。
最後は1馬身1/4差をつけてキタサンブラックがその力を存分に見せつけました。

勝ち時計3:12.5。
3000m通過が3:00.3だったのですが、ラスト200mのハロン棒を3分を切るか切らないか程度で駆け抜けていたので、時間感覚が狂った?かなという錯覚に陥りました。

キタサンブラックは本当に強い馬です。
本命に推してもいないので酷いものですが、走りの安定感といったらありません。
毎回書いていますが、スタートの良さと追い出してからの反応、ゴール前まで抜群に切れる事はないものの落ちない走り。文句なしに歴史的名馬ですが、あのダービーは一体何があったのか?と不思議になる位の成績です。

ビートブラックは後続に4馬身の差をつけました。
当然ながら、そういう競馬ですし、ランナーズハイにでもなったかのような走りでした。
今回はそれを上回り、前にも後ろにも楽をさせず、最後まで自信が頑張り切り、ゴール前の驚異的と言っていい粘り腰。
ブラックタイドの後継とかいうかウインドインハーヘアの血を繋がるのはディープではなく、実はこっちかもしれませんね。それ位の身体能力です。

シュヴァルグランは積極的に走りましたが、ワンアンドオンリーがいなければもう1列内でジックリできたかなと思うと残念な負け方。
ただ、直線で差を詰められていませんし、枠を生かしたナイスレースでした。

サトノダイヤモンドは枠を言い訳にするレベルではないと思いますが、やはりこうみると少しありましたかね。
最後まで伸びていて上がり35.0。きっちり出ていましたが、4コーナーで1頭分膨れたのがキタサンブラックは及ばなかったにしろシュヴァルグランは差せたと思います。
シャケトラが、ワンアンドオンリーが、シュヴァルグランがと前と隣の連中の動きに影響された気もしますが、これがレースです。
負けたので残念ですが、この差なら勝負の綾だと思います。これで「ほらやっぱりキタサンの方が強いじゃん」という人も出てくると思いますが、そんな事はないと思っています。私がこっちの方が好きなタイプなので、贔屓は仕方ないです。

アドマイヤデウスは内でジックリ。
ここ最近味のある騎乗の目立つ岩田騎手本領発揮の内差し。
4コーナーで手ごたえが少し怪しくなりましたが、それでも頑張りました。
馬券にならなかったので、何とも言えませんが京都の高速馬場が好きなんでしょう。

アルバートが道中チョコチョコ走りながら最後伸びて5着。
枠も良かったですが、積極的に走ったのがこの結果に。
後ろ過ぎずに好騎乗でした。もっと馬場が悪ければ…。
生粋のステイヤーだけに、ハンデが上がりますがメルボルンカップにでも行かないと走る所がないかも。

ディーマジェスティは6着でしたが、道中の割に直線粘っていました。復活もそろそろあるかも。
4コーナーでサトノダイヤモンドに並びかけようとしていましたので、何か思い出してくれればいいな。
スタートの雰囲気が悪すぎて出鞭が入っているように、余りにもずぶくなってしまいました。
そこが解消されないと勝ち切れるイメージは沸きませんが、なんとか復活のきっかけになってほしい。

ゴールドアクターはスタートであれだけ後手を踏んでしまうとこの馬の良さが出ませんでした。
こればっかりは仕方ありませんが、タイミングが合わないというよりかは馬自身のグリップが利かなかったのかな。昨年に比べて道中も悪くなかっただけにもったいないです。

シャケトラは出遅れからの前に行き、4コーナーでは外へ回しと散々。
これでは流石にどんな馬でも負けます。
全体的なリズムが悪すぎたと思いますし、まだ7戦目。力があるのは分かっているので、3200mの京都では良い所がありませんでしたが、見限るのは早いと思います。

 

最後は力の入る叩き合い。
古馬最強を賭けた戦いで、それに相応しいレベルのレースでした。
距離に不満も出る事が何かと出るレースですが、ロングディスタンスで世界最高峰のレースですし、やっぱりこの距離ならではです。