あのレースで8億円売れたのを考えて
先日、アメリカの競馬の祭典ブリーダーズカップが終わりました。
今年も盛り上がり、非常に面白いレースが多数組まれ、恐らくディスタフとクラシックは歴史に残る好勝負として語り継がれるでしょう。
そんな中、日本ではフィリーズ&メアターフという盛り上がりという点では1枚落ちるレースで馬券が売り出されました。
ヌーヴォレコルトには非常に申し訳ないですが、「日本を代表して満を持して出走」という感じもせず、出走馬ももちろん海外競馬を盛んに見ている人には馴染み深いですが、興味のない人には「なんのこっちゃ?」という馬だったと思います。
メルボルンカップの売り上げにも驚きましたが、あの日はある意味平日だからこそ。
そして「荒れる」と評判のメルボルンカップ。「一発穴狙いで大儲け」を狙うには間違っていません。
しかしBCは日曜日の早朝。
少し待てば日本で競馬もあるし、そろそろ飽きる頃だろうと思っていたら8億円位売れたと聞いて驚きしかありません。
アメリカも過去最高の人の入り、売り上げは?
レース終了後にアメリカはきちんと売り上げとか入場者数とかを発表します。
今年は過去最高の人の入りでした。
クラシックの日(日曜日)は72,811人の入場者だったそうです。
2日になってから過去最高を記録し、2日間で延べ118,484人がサンタアニタパーク競馬場に来場したという事がニュースで出ています。
さて、問題の売り上げです。
Common-pool wagering on Saturday’s 12-race Breeders’ Cup card was $109,055,897, a 3.2% increase over the $105,625,491 wagered in 2015. Common-pool wagering for the two days was $159,991,803 an increase of 6.25% over the $150,574,656 total in 2015.
と出ました。
ブリーダーズカップ全12レースでの売り上げは$109,055,897。今の円レートだと「113.9億円」です。
これは「Breeders’ Cup」と冠の付く12レース合計での売り上げです。
もちろん単純な平均という事はありませんが、仮に単純平均するなら1レースの売り上げは9.3億円。
フィリーズ&メアターフの総賞金は$2,000,000。2億円ちょっと。
払い戻しのために仮に9.3億円の80%(20%がテラ銭)を使うと仮定すると、1.86億円。
こんな単純ではないと思いますが、これ位の推測をしただけで赤字です。
もちろん入場券もかなり高いですし、収入はこれだけではないですが、やっていくのも一杯一杯なのが現実でしょうね。
だからスポンサーもついています。凱旋門賞だって一緒。あれだって今の正式名称は「カタール 凱旋門賞(Qatar Prix de l’Arc de Triomphe)」です。
BCの記事全文はこちら
http://www.breederscup.com/article/attendance-and-handle-increase-2016-breeders-cup
多いと見るか少ないと見るかですが、あれだけのスターホースが1日中走ってこれですから、日本の感覚だと信じられません。
日本だと今年の高松宮記念の売り上げは124億8344万円。高松宮記念1レースより下なので、どう考えても売れている感じはしません。
私はチャーチルダウンズ競馬場にブリーダーズカップを観戦に行っていますが、クラシックで2万円($200)買っただけでえらい驚かれたので、そういうもんなんでしょうね。
馬券売り場で並んだ記憶はありますが、混んでいても前に並んだのは精々8人くらい。
加えて窓口は人+その場で考えている人のダブルコンボで、処理が遅い遅い。あんなスピードで処理してたら売り上げが上がる訳がありません。
機械の馬券発売機もありましたが、使い方のマニュアルも無ければ係員もいない。
売り場にも誰もいないという状況でしたので、「ここは何のためにあるんだ…」とその空間を不思議に思いました。
他の海外ってどんな感じだろう?
先日行われたメルボルンカップ。
日本ではあれだけ難しいのに6億以上売上ました。「難しすぎる。買うやついるのか?」と思いましたが、それだけいたんですね。お金は大切にしましょう。
以下のサイトにオーストラリアでの主要な馬券を扱う多分ブックメーカーの売り上げが書かれていました。
この辺りの詳細は分からないのですが、Victorian TABという所の売り上げは以下の様になっています。
「一番売れているのが単勝」という発見もありつつ、総売り上げは$56,097,391。58億円位です。
休みになる位のお祭りですし、それなりに人も来ます。4日間で318,854人が来たそうです。これでも減っているらしい。
With some brilliant sunshine over the four days, 318,854 local, interstate and international visitors flocked to the 2016 Melbourne Cup Carnival to enjoy the racing, fashion, entertainment and hospitality of the world’s most vibrant racing event.
参照:https://www.justhorseracing.com.au/news/australian-racing/2016-melbourne-cup-carnival-thrills/355957
Victorian TAB以外の数字もリンク先には載っていますが、大体50億以下位。
3つ合計で150億円に届かない程度です。
香港はどうでしょうか?
昨年の年末の香港国際競走は85,552人の人の入りでした。
売り上げはというと以下の数字が出ています。
Turnover for the day was HK $1.449 billion ($188.37 million US) across the card’s 10 races.
10レース合計で$188.37 millionですので、約200億円。
予定通りにモーリス、エイシンヒカリ、ロゴタイプ、レッドファルクスなどがこぞって4レースに出走した場合、日本での売り上げは曜日もいいですし、相当行くんじゃないでしょうか。
10レースで割ると単純計算で1レース20億円。
香港カップは多いでしょうし、G1は30億円だとしても、4レース(カップ、マイル、ヴァーズ、スプリント)併せても高松宮記念に匹敵するかどうかの規模です。
香港は馬券が他の国に比べると売れる所ですが、4レース合計で高松宮記念と同じ位とすると、少ないというか日本人は「めっちゃ売れてるな」とは思わないでしょうね。
競馬の文化ってなんだろうなって思う
ここまで色々と見てきて、「競馬文化とはなんぞや?」と高尚な事を考えてみます。
海外競馬のまとめとか見ると、「海外の競馬は文化がなんたら」とか「日本は鉄火場、海外は社交場」みたいな書き込みを見ます。
間違っていませんし、この売り上げを見ていると、「馬券文化」は相当です。
予想の仕方も緻密だし、いいところをついています。
「この馬がきて配当がこれだけなの?」というレースは沢山ありますし、感心します。こっちは外れてるのに。
海外競馬の予想もその辺のブックメーカーなんかより的確で、ほぼ知らない馬を予想しているとは思えません。
情報も多いですし、少なくとも「馬券を含めたエンターテイメントとしての文化」としてはアメリカやヨーロッパの遥か上だと感じます。
何が正しいかは分かりませんが、少なくとも日本では「馬が走っているのを賭けて盛り上がる」という1点に関しては、圧倒的です。
だからと言って、欧州競馬とかを見て「これが本来の競馬場。だから日本は。オイオイとかあり得ん。」というのはなんか違う気がしてなりません。
エンタメとして成り立っているからこそ、競馬を知らない人でも「有馬記念」は知っている人も多いのだろうと思いますし、浸透度合いで言えば、日本の方が競馬文化が浸透していると言えなくもないのかなって。
「競馬が文化としてなっているのは果たしてどちらか?」というのは見る人が見たら意見が割れるでしょうね。
ただ、馬術としての文化は欧州ですが、競馬は「アスコットみたいな服装で見るのが本物」ではないと思っています。
ちなみに、チャーチルダウンズ競馬場でお会いした日本人の方とお話しした時、その方は世界中の競馬場を回っている人でした。
「どこが一番良かったですか?」と聞いたら「東京。ご飯食べる所も多いし、広くて楽」と即答していました。
その方はケンタッキーダービーもアスコットミーティングも凱旋門賞も行ったことがある方でしたが、そういう回答。
私もロンシャンとメイダンにも行きましたが、楽なのは東京だと思います。入場料とか安いし。
こういう文化論みたいなことを考えると、なかなかスッキリと答えがまとまりませんね。学問ですから仕方ありません。
競馬をこよなく愛する方はジャパンカップもこうあるべきという意見も山ほどあるでしょうし、有馬記念を最後にしないスケジュールもどうかと思いますが、海外競馬を見る機会が増えると思うからこそ考えてみたいことです。
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