「前略ディープインパクト様 関係者からDEEPへの手紙」を見て思う




東京競馬場の競馬博物館で秋季企画展「前略ディープインパクト様 関係者からDEEPへの手紙」を開催していたので、見に行きました。
(競馬場を賭けもせずにぶらぶらしていたので。嫌な客だこと。賭けても少額だし。)

時間潰しでしかないので、「何が何でも見たい!」という熱量では行っていません。
好きな馬でしたが、今から10年以上前の馬。随分前な気がします。。。

ちなみに、初代iPhoneの発売は2007年ですので、ディープインパクトが現役時にはiPhoneというものは存在していません。
この10年で随分と世界が変わりました。
YouTubeが2005年2月サービス開始なので、弥生賞の少し前です。

私は競馬をナリタブライアンが走っていた頃からやっていますが、初めて現地観戦というのをしたのはディープインパクトの弥生賞です。
そういう意味で思い出のレースです。

まだ競馬ファンしか知らなかったディープインパクト。
若駒Sの圧倒的な走りを見て、「これは見に行かねば」と一念発起して中山競馬場へ。
最初は空いていたのでゆったりでしたが、弥生賞とはいえ舐めてました。最後はスタンドでぎゅうぎゅうになり、ほとんど見えず。
辛うじてアドマイヤジャパンを交わしたのは見えたか見えなかったか?という感じで終わりました。

確かに今思えば強いのは強いですが、「あれ?こんなもん?」という空気も少し出ていた気がします。
もっと圧勝をと麻薬の様に飢えていた私のようなニワカ競馬ファンからしたら、いい良薬になったと思います。

その後は一切現地観戦できず。
当時土日は別のこと(野球)をやっていたので、競馬は録画が基本でした。
ただ、毎週欠かさず行っていた練習をズルして休んでまで見たのが菊花賞。思い出のレースです。

その後の観戦も酷いものでした。
ジャパンカップは行ったはいいですが、今では考えられない位の遅い時間の現地入り。
手摺りに今でも登る輩がいますが、その時はどうしても見たくて登りました。えらいバカなことをしたものです。

当然係の人に怒られて手摺りから降り、そのままスタンドを見ずにモニター観戦。
いい子の皆さんは止めて下さい。あれはマジで危険。自分じゃなくて落ちたら下の人が。アドレナリンは言い訳にできません。

そして引退レース有馬記念。
これは始発で行ったのに全然見えず。「これが有馬記念なのか…」と。
ディープインパクト引退式も立ち会ったものの、満足に見えたか?というと無理。人多すぎる。

この有馬記念で思い出すのは同日のホープフルステークス。
弟のニュービギニングが勝ち、競馬場が拍手に包まれたのは印象的な出来事でした。

「観戦のベースを作ってくれた馬」というのがディープインパクトであり、競馬観戦とはこういうものだと身をもって知る事になったのもこの馬。
そういう意味では、多大なる影響を与えてくれた馬で、もし出会わなければ今は違う人生だったかもしれない。良い悪いはかなり遠くのあっちの方に置いておきます。

 

引退直前の有馬記念では単勝の未払い戻し馬券が数万円でヤフオクで取引されていましたが、あんなのはこの馬位です。
ちなみに、私もこの馬の有馬記念の馬券は取っておいたと思います。今はどこにあるか分かりませんが。

菊花賞の5000万は凄過ぎますが、恐らく有馬記念は同じ位だったかもしれません。

 

それにしても、この馬は不思議な馬です。

日本はハイセイコーやオグリキャップのように、どちらかと言えば下克上というか生まれながらのエリートは競馬ファン内では人気になってもこんなに人気になった馬は知りません。
有馬記念ではワイドショーで特集が組まれる馬ですし。
アメリカも同じでカリフォルニアクロームがあんなに人気だったのは牧場が西海岸で徐々に登り詰め感があったからでしょう。

サンデーサイレンスの中では安い方だったとは言え7000万円。
欧州でG1勝ちがあるウインドインハーヘアに大種牡馬サンデーサイレンス。ブラックタイドの弟と血統背景も裏付けあり。
ノーザンファーム生産でメジロマックイーンなどを管理した池江泰郎厩舎。
馬主はキングカメハメハを持ち、2000年以降一気に勢力を増してきた金子真人さん。
騎手は武豊騎手。

エリート中のエリート。
毛嫌いされてもおかしくないですが、それに反して相当な人気だったと思います。

小さな馬体、追い込み脚質、色々あったとは言え凱旋門賞への挑戦。
負けなかった事も大きかったでしょうが、それだけではない魅力があったのは事実です。
社会学的に調べてほしいものですが、ここまで人気になる馬の特徴としては少なくともやや異質な気がしています。エリート過ぎて。

1つはデビュー戦が相当な走りだったというのはあるかな。
あれは競馬見たことない人でも格が違うというのを感じ取れると思いますし、若駒Sでの走りもそう。
デビュー戦で大物感を出す馬は多くとも、それが生涯続くという馬はご存知の通りほとんどいません。

この馬は競馬ファンの最初のワクワクを最後まで続けてくれたという所は特殊でしたね。
オグリキャップのように、途中下がって、紆余曲折を経て最後復活というカタルシスはないものの、期待に応え続ける事でファンと一体感を作ってきたという稀有な馬だと考えています。

最近だとブラックキャビアやフランケル、ゼニヤッタ。直近はウィンクスと同じタイプ。

 

漫画「ヒカルの碁」の門脇さんのセリフでこういうのがありました。

「誰にも負けたくないと思う一方で 自分など遠く及ばない力にあこがれるのは そいつが歩いていく先を見たいからだ……自分をはるかに越えていくその先を」

多分こういう気持ちを多くの競馬ファンが共有できた馬だったから、だったのかなと思っています。
下克上とは違い、エリートが誰にも邪魔されずにトップを歩き続ける姿はまた違った魅力があります。

どんでん返しの面白さもありますが、予定調和の水戸黄門やアンパンマンの面白さもあるのでしょう。
勝ち続け、ファンの期待に応え続け、引退レースは12月24日のクリスマスイブ。出来過ぎたストーリー。これもいいものです。

後継種牡馬はまだ明確に出ていないのが気になる点ではありますが、血統背景から言えばリアルスティールか、サトノダイヤモンドが筆頭かな?
リアルスティールはキズナなどと同じストームキャットの肌ですが、母ラヴズオンリーミーはなんせ名牝ミエスクの直系。
サトノダイヤモンドは珍しい南米の母系ですので、余計なクロスが発生しない強みがあります。

そろそろ事故で死んでしまう年齢なので、早めに期待に応えるレベルの後継が出てくればいいのですが、そこまで上手くいくかな。
まぁディープインパクトもサンデーサイレンス晩年の馬ですので、ディープインパクトも最後の方にジェンティルドンナの牡馬版みたいのが出てきそうですけどね。

最後は決めてくるでしょう。なんせディープインパクトですから。