2016香港国際競走 レース回顧




凱旋門賞は日曜日の夜、メルボルンカップは平日昼間、BCは土日早朝と時間がずれて行われていました。
それに対して香港は日曜日のまさに日本競馬と同じ時間に行われます。
これがどう売上含めて影響するのか?も注目のレースだと思います。

4レース売上総額は38億2070万6800円。
凱旋門賞は物珍しさがあったからでしょうが、4レースでこれなら十分でしょう。香港本体ですら去年の売上が約200億円位なので。

ちなみに、香港の現地はというと、

A vibrant and vocal crowd of 100,710 turned out to savour the four Group 1 races at the end-of-year showcase, generating an electric atmosphere. That figure was a new high for the event and 17.4% up on the previous year. Turnover for the 10-race card came in at HK$1.518 billion.

引用:香港ジョッキークラブのニュース

観客数100710人、10レースカードの売り上げは15億1800万香港ドル。日本円で175億円位。

日本馬も大挙して押しかけており、この流れは止められそうにありません。
阪神JFの時期を変えろという声が出そうですが、このまま行ってほしいです。若手のジョッキーなどがG1に乗るチャンスです。

全レースを事細かに書くと大変なので、それなりに。
香港はデータが揃っているので助かります。

馬場は同日第3レースのクラス3(日本で言うと1000万下位)の1400m戦が1.22.16。良いですね。
昨年も同じクラス3の1400mで1.22.05。同じくらいの馬場状態だと思います。

 

香港ヴァーズ(G1・沙田競馬場・芝2400m)

これはカッコイイ勝ち方でした。
サトノクラウンお見事。

イースタンエクスプレスが行くところで外からハイランドリールが行きます。
最初が25.29ですので、そこそこ出しました。

ハイランドリールが先頭で向正面へ行きました。
ヘレンハッピースター、イースタンエクスプレスが行くところで外からビッグオレンジが絡みます。

スマートレイアーが一番前、サトノクラウンは内でじっくり。その前にシルバーウェーブ。
最後方にヌーヴォレコルトでした。

先頭で後続を潰し切ったハイランドリールの後ろからスルスルとサトノクラウン。
外でヌーヴォレコルトやスマートレイアーも頑張っていますが、間からワンフットインヘヴンが伸びてきます。

逃げ込みを図るハイランドリールを交わすサトノクラウン。
ラスト24.13ですので、ハイランドリールも脚は決して鈍っていません。これを交わし切ったのはスカッとしました。

ハイランドリールの逃げが淀みなく、力ない馬が潰れたのが良かったと思います。
力差が明確に出たため、直線バラけたのもすんなり行けました。
去年は道中緩み、非常に楽なレースでしたが、今年は一切緩みませんでした。

昨年:25.84 – 25.61 – 26.09 – 24.19 – 23.64 – 23.06 = 2:28.43
今年:25.29 – 24.48 – 24.55 – 24.35 – 23.42 – 24.13 = 2:26.22

結果的に前に行って粘ったのはハイランドリールのみ。

2番手のイースタンエクスプレス、3番手のアンティシペーション、ヘレンハッピースター、ビッグオレンジ、シルバーウェーブと軒並み下の着順に。
そんな中唯一直線で突き放しにかかる走りは、負けはしたものの、さすがの強さを感じました。

サトノクラウンの前にいたのがシルバーウェーブとビッグオレンジというスタミナ切れの馬だったのも本当に良かったと思います。とはいえ、きっちり待って抜け出すのはモレイラ騎手はさすがです。
ここの所やる気のないような負け方もありましたが、払拭する勝ち方。ドバイシーマとかなら十分勝ち負けでしょう。

ヌーヴォレコルトも外からいい脚で伸びましたが4着でした。
良く走ったと思います。道中が流れているので、無理しなかったのは正解ですが、最後は力差がありましたね。

スマートレイアーはやや前が動く中じっくり待てていました。
そこから一生懸命粘っていましたが、5着。流れに乗れて走れていましたが、ここは距離もあったと思います。

昨年は13馬身程度だった先頭からビリまでの差が今年は28馬身弱。
厳しさを物語っています。

ハイランドリールの後ろがワンフットインヘヴンで、そこまで7馬身位あるので、ハイランドリールは123ポンドに恥じない走りはしています。
そう考えると、サトノクラウンは123ポンドの走りと評価されると思います。
一気にLカテゴリでポストポンドに次ぐ現役世界2位になってもおかしくありません。

 

香港スプリント(G1・沙田競馬場・芝1200m)

やはり香港馬の強さが目立ちました。
日本の2頭は力負けでしょう。

ペニアフォビアにスーパージョッキーが先頭でエアロヴェロシティは4番手の内。
ビッグアーサーはスタートは少し遅いとはいえほぼ五分に出て外からスーッと8番手位の外。レッドファルクスは後方4番手位。
追い込んで来たラッキーバブルスが9番手の内、4着だったアメージングキッズが後ろから2頭目、最後方が5着だったサインズオブブレッシングです。

2番手にいたスーパージョッキーや、エアロヴェロシティと並んでいたレベルデインは8着と11着に沈んでいるので、力ない馬はきっちりと負けています。

4コーナーの雰囲気はビッグアーサーは良かったのですが、そこから伸びませんでした。
ラップはほとんど去年と変わらないので、逃げたペニアフォビアは最内から先頭を気持ちよく走ったと思います。
もちろん去年の勝ち馬ですし、力あるのは分かっていましたが、今年の成績がどうも悪いので軽視してしまいました。
好走する理由も一杯ありますし、凡走する理由もあります。
どちらを取るかは好みですので、私は凡走に賭けてしまいました。

エアロヴェロシティは道中3番手でこれも内枠から簡単にポジションを譲りませんでした。
3コーナーでノットリスニントゥーミーがストラスモアとの間で挟まり、結構大きな不利。そのあおりを受けて後ろのラッキーバブルスもややブレーキ。
レースの流れで起きた事ではありますが、ここは強引でした。

直線は残り200m地点でラッキーバブルスとビッグアーサーが並んでいて、そこからゴールでは0.6秒、4馬身半位遅れてしまいました。
もちろん最後追っていないので、これが本当の差ではないでしょうが、3馬身位はきっちり遅れているので、この差は小さくないと思います。
それにしてもラッキーバブルスは安定して伸びます。立派なスプリンターです。

レッドファルクスはほぼレースに参加できませんでした。
スプリント戦は追い込みができない事はないので、作戦どうこうではなく、追い込めなかっただけでしょう。

エアロヴェロシティはレースは強引でしたが、勝ち切るのはこの馬の強さだと思います。

やはりスプリント戦は甘くありません。
ロードカナロアみたいな馬でもないと難しいですね。
ビッグアーサーもスピードはあると思いますし、決してスピードが劣っているとは思いませんが、どこの差が大きいのでしょうかね。

来年以降もこの結果を踏まえて、相当のスプリンターでないとなかなか日本馬を素直に買うのは難しい。

 

香港マイル(G1・沙田競馬場・芝1600m)

日本勢はイマイチでした。
ロゴタイプが出遅れてしまったので、あれがなければ、着差が着差だけに3着まではあったかもしれません。

好スタートから後ろをチラチラ見ながらビューティーフレームが飛ばします。
それにネオリアリズムもついていき、後れを取り戻す感じでロゴタイプも3番手に。

ヘレンパラゴン、ビューティーオンリー、エイブルフレンド、サトノアラジンと行った組が後方へ下げました。
レースとしては流れました。

ビューティーフレームはビューティーオンリーのペースメーカー役だったとは思いますが、ネオリアリズムとかは大分つられてしまった感じがします。
ここのマイル戦は前後半で後半が1.5秒~2.0秒近く加速するレースになるのに、今年は47.02 – 46.46 = 1:33.48。

半分の上位7着までで前半10番手より後ろの4頭が全て入っているように、前に行くと苦しくなります。
ロゴタイプは内でじっくりしてよく頑張ったと思いますが、スタート後にややペースに乗るまでに無理をしたのが響いたとは思います。
ゲートで待ちすぎてしまい、気持ちが切れてしまったと言っていましたので、難しいですね。

直線はギリギリまで待っての追い出しています。
コース取りも不利もないですし、これで馬券にならないのはロゴタイプらしいということにします。

前に行った馬がペースメーカーと考えると実質逃げている訳ですからね。
マイルの逃げ切りはミッキーアイルがダイタクヘリオス以来だった通り、簡単ではありません。

サトノアラジンは最後方は良いと思います。
直線外出して一直線に走るのもペース含めた作戦としては良かったと思います。
直線で左鞭でややエイブルフレンドの後ろに入ってしまい、追えないシーンもありました。もったいなかったと思います。
道中の走りを見ると、少し顔が外を向いて走っているので、走りに癖があるんだと思います。

よれたとはいえ1頭分。
エイブルフレンドのギリギリ外を走ろうと思ったらそうするしかありませんし、難しい所です。

1着ビューティーオンリーから6着エイブルフレンドまで着差2馬身。0.3秒差。
力の差がこれしかないので、展開1つで大きく変わるレースでした。私は展開読み違いです。

 

香港カップ(G1・沙田競馬場・芝2000m)

モーリスがなんてことなく勝ちました。
出遅れもなんのその。これだけ強いと何もいう事がありません。

直線はムーア騎手が内をするすると抜けましたが、進路を操作しながらも全くスピードを落とさないのだから恐れ入ります。
サトノアラジンのように、本来真っ直ぐ走るのは難しく、全力で走ると操作は本来は難しいはず。
コース取りを優先したため、恐らく抜いてくる時はモーリスの全力疾走ではなかったと思いたい。
それでステファノスやラブリーデイと並ぶ事無く差しているんだから、誰が抵抗できましょうか?

エイシンヒカリの惨敗は仕方ないでしょう。
去年に比べて相手も強く、自分も随分とパフォーマンスを落としました。
やはりここはエイシンヒカリについて考えていきたいと思います。

昨年と似たような感じに走っていましたが、止まり方が違います。
エイシンヒカリは以下のラップでした。

昨年:26.17 – 23.47 – 23.75 – 23.59 – 23.62
今年:26.79 – 23.31 – 23.24 – 23.46 – 25.38

大体4コーナー付近を1:37.0を少し切る位で通過した時は痺れました。「おお、去年と同じラップだ」と。事実1600m通過時点では今年の方が0.18秒早いだけです。
所がそこからの伸びがありません。
去年は12.0を切るラップを2回続けられたのに、ラストは約2秒も落としています。冒頭に書いた通り、馬場は恐らく昨年と同じ位です。

途中離したために、真ん中で23.24という昨年より0.5秒速い所がありましたが、2Fですので、1F平均だと0.25秒。無茶苦茶なラップを刻んだとは思えません。
最内枠からスタートし、思ったより遅い入りで走り、ほぼ絡まれる事無く行っています。

パドックで放馬したらしいですが、それだけでここまで落とす事はないでしょう。
イスパーン賞以降のパフォーマンスが出なかったのが非常に残念です。
並ばれて落ちたのもありますが、それ以前に落ちているので、馬自体がレースを投げてしまっているのかも。引退する馬らしいといえばそうですね。

ラブリーデイとステファノスも走っていましたが、ラブリーデイもステファノスは少し仕掛けが早かったですかね。
ヘレンスーパースターが最終的にビリなので、待っても十分交わせたので、ラブリーデイは待っていれば内が開いたとは思います。
そうすればモーリスも少し封じることができ、ここまで離される事はなかったかもしれません。

モーリスも内を突きました。
シークレットウェポン、ホースオブフォーチュン、ブレイジングスピードの順で内から並んで日本馬を追いかけ、唯一シークレットウェポンだけが交わせました。
この競馬場の特徴ですので、来年以降も覚えておきたいです。
沙田競馬場の芝2000mは外は差せません。

それにしてもブレイジングスピードとかも頑張っていますし、そろそろ香港もこの距離は世代交代したいところですね。