写真で振り返る 第36回ジャパンカップ レース回顧




スタートから向正面

各馬そこまで明確な出遅れはありませんでしたが、私が注目していたディーマジェスティの蛯名騎手がバランスを崩すシーンがありました。
お隣のイラプトもスタート直後に僅かながら立ち上がり、1歩目が後手。
対してキタサンブラックは好スタートを決めました。これが前半の全てではありませんが、このクラスの戦いなので、僅かな誤差が積み重なると巻き返しが困難になります。

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キタサンブラックが前に行き、リアルスティールのムーア騎手が盛んに内を見ながら前に行きます。
サウンズオブアースが外からリアルスティール以外被される事無く走り、自分も予想した通りではありますが、非常にスムーズにレースを進められそうでした。

ビッシュやフェイムゲームはスタート直後から下げて内へ。
これも1つの作戦ですし、これはこれでいいと思います。

ムーア騎手が横を盛んに見るのもわかります。
一応キタサンブラックが逃げていますが、最初の入りが13.3。
例えば逃げ馬が決まっていないケースで、「誰が行くんだ」と探りを入れている場合はあり得ることですが、「キタサンブラックが行くんでしょ。このペースでいいのかな?」と思っていたのではなかろうかと。

恐らく「早く先頭に立って隊列を決めてくれ」という思いもあったのではないかと推測です。
あのまま行ってしまう訳にもいきませんので、先頭に立つであろう内側を見ますわな。

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最初の2Fで勝負ありとは言いませんが、キタサンブラックが非常に楽でした。
馬場は多少掛かっても上がり33秒台は記録されるコースで、入りが24.6。あのエイシンフラッシュがなぜか逃げた2013年で24.2、シンゲンがなぜか逃げた2010年で24.5。
これらに比べて違うのは、ほぼ確実に逃げるという馬がいる点。

1枠1番。G1でも逃げて勝っている。ライバルを考えればほぼ逃げる。
だからこそ後続が「キタサンブラックを待ってしまった」状態を作り出してしまったと思います。
「行くんでしょ、早く行ってよ」としている内に、「ハイハイ、分かってるって」とゆったり走っているだけで先頭へ。そりゃムーア騎手からしたら、あれよあれよと前に行けるものだから、ペース判断が狂っているのかわからなかったのかもしれません。
キョロキョロしている気持ちもわからんでもありません。

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そんなペースの中、ディーマジェスティとナイトフラワーが手を動かしたりしながらの追走。
ペースは決して速くありません。そこまで無茶しなくても挽回できると思いますが、全体的にスタートからチグハグ。
予想は本命にしていましたが、この時点で既に黄色信号が灯った感じでした。

基本は抑えるペースです。レインボーラインとかはガッチリ抑えています。

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1コーナーはキタサンブラックが悠々と先頭を走ります。
2番手にワンアンドオンリー、3番手に外からリアルスティール。
ゴールドアクターは内でじっくりを選択しました。「逃げてもいい」という発言がありましたが、その通り。このペースなら逃げても全然大丈夫です。「今から行け」と思っていました。

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1コーナーはリアルスティール周辺をアップに。
他の馬はきちんと前を向いて走っていましたが、リアルスティールだけ顔を内へ。ムーア騎手が内を向いているのと同じように馬もずっと内を気にしていました。
確かに返し馬の時もこういう走りをする時がある馬です。
ちょっとだけ3頭が並んだ時に反応しましたが、引っ掛かって暴走寸前という事はないので、気にする範囲ではないでしょうが、馬を前に置くまでに外枠ならではの苦労が見えました。

サウンズオブアースが前を見ながらゆったりといい感じ。リアルインパクトも今回は積極策です。

向正面に入り、隊列が決まります。

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キタサンブラックを先頭にワンアンドオンリー2番手。
内でゴールドアクター、外にリアルスティール。

イラプトがいて、リアルインパクト、ルージュバックも思ったより前に。
外からサウンズオブアース。
内でビッシュ、シュヴァルグランが外、間にトーセンバジル。

最内のスペースを走るフェイムゲームにイキートス、外にレインボーライン。
後方にディーマジェスティ、ヒットザターゲットとナイトフラワーという展開です。

ペースは上がりませんでした。
長手綱で本当にダラダラと手綱が唯一動いているキタサンブラック。まるで3200mを走っているかのような走りです。

この馬は天皇賞春逃げ切った時で37.5 – 61.8。
馬場が良馬場の京都と比較して多少かかるとはいえ距離が800m違うのに37.2 – 61.7。

後ろの馬は手綱がピーンと張っていますが、それも当然。流れはゆったりですから。
対して1頭だけ手綱ダルダル。クビの動きと共に余った手綱が揺れていますので、馬の気持ちで走らせただけです。
ブリティッシュの中で1頭だけウエスタンをやっていたような手綱の動きでした。
もちろんそれが難しい事は承知していますが、できる状況だったのは大きいです。

絡まれるとそうはいきません。
馬は真っ直ぐ走れませんので、左右の動きを制限するためにもちろん手綱は張りますし、馬自身も気を張ります。
人間だってそうです。夜道で隣に人がいればそりゃ少しは警戒します。

「鉄砲玉になれ。玉砕しろ。」とは言いませんが、1番人気が逃げている訳です。
関係者からしたら「自分の役割じゃない」というのはあるでしょうが、楽に走らせすぎ。

1000m通過後に12.5 – 12.7 ともう1回ペースを落としました。
そこで武豊騎手が手綱をきっちりと持ち直し、後続を引き付ける余裕があるのでギリギリまでペースを下げます。
こんなに自由にやられてどうする?という感じすらします。
当たり前ですがキタサンブラックは天皇賞馬です。何が逃げてると思っていたのか聞いてみたい位です。

4コーナーから直線

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画像がかなり粗いですが、キタサンブラックの白い帽子は内を4~5頭分開けて直線へ。
今日は芝のレースはほぼ全てこれでしたので、4コーナーの内側は悪かったですね。まぁ最内グリーンベルトよりはフェアですからいいんじゃないですかね。

4コーナーから外目をラストインパクト辺りも上がっていきましたが、スピードが上がり切らない感じなのは今年の調子かなって思います。

直線はキタサンブラックの後ろにゴールドアクターが入ってしまいました。
左右にキタサンブラックが少し当然フラフラはするので、それにタイミングを合わせるようにゴールドアクターも一緒に。あれでは抜けません。

リアルスティールのムーア騎手が直線で大分外にこだわりを見せていたのが気になりました。
そこまで外が有利だったとは思えず、あのまま真っ直ぐ走ることを目標にした方が良かったんじゃないかなって思います。
ラストインパクトやサウンズオブアースが少し寄られました。不利ではないですが、びっくりしたと思います。

伸びない内を選択したイキートスはドイツで鍛えた健脚ですので、これ位の荒れた馬場はへっちゃらなので、ロスを減らす方に賭けたんでしょう。
これは立派な戦法です。

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ルージュバックも内を選択していますが、この馬はなるべく良い馬場を全力疾走でこその馬なので、ペースが遅いのはいいんですが、なかなか難しいレースになりました。
ゴールドアクターも切れが不十分です。追ってからグンとクビを下げて加速するシーンがここでも見られず。
リアルスティールも外に出して手前を替えてからが回転が鈍ったので、疲れたのかな。

そんなラスト200mです。

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キタサンブラックはこうなると逃げ切り濃厚。
疲れてそうなリアルスティールを外からサウンズオブアースとシュヴァルグランが追い詰めます。
間にひっそりとレインボーラインも伸びてきていますが、前が開くまでに時間がかかってしまいました。
ルージュバックもこの辺りまでは一緒に走れていますが、ここから一気に失速します。1800mとは違う走りですし、距離の壁に感じました。

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ゴールドアクターを振り切り、サウンズオブアースも伸びてきているものの差はセーフティーリード。
楽な逃げだったのは確かですが、これは立派な走りでした。

皐月賞とか見ている印象だとクビがグッと詰まっての返し馬のイメージがあり、こんなにクビをゆったりと使って走るのかと感心しました。
もちろん武豊騎手の技術あってこそでしょうが、ストライドが勝手なイメージですがピッチ走法のイメージだったので、直線は驚きがありました。
530kgを超える馬がこういう体全身を使った走りをすると、もともと見栄えがする馬ですが、綺麗だなと思いました。

サウンズオブアースは最後いい脚でしたが、2着なのはこの馬だからでしょうね。
3着でもなく、1着でもなく、2着。
これでG1で3回目の銀メダル。相変わらず主な勝ち鞍「はなみずき賞」から抜け出せず。
レースはしやすいと想像した通り、外目を自由に走ることが出来ました。直線も馬場の良い所をきっちりと走り、上がり34.5。次で逆転を狙うしかありません。

シュヴァルグランも大外枠からある程度ポジションが取れたので、最後間に合いました。
リアルスティールが思ったより前に行ったので、想定より1つ前のポジションが取れました。
一旦サウンズオブアースに離されましたが、ゴール前に行くにつれて詰めていきましたし、スピードの乗りが若干悪い反面、最後まで全く止まっていませんでした。
3000m級のレースで見てみたいです。

ゴールドアクターは切れ味不十分の4着。
最後まで粘ったのはグランプリホースの意地でしょうが、勝ち馬と3馬身差は小さくありません。
レースは理想通り運べたと思いますが、もう少し積極的に動いたらどうなっていたかなって思います。次は勝っている中山ですし、ここまで簡単にやられないでしょう。

リアルスティールは直線外に出し過ぎか?と思う所もありましたが、最後疲れていた感じに見えます。
ゴールドアクターと並んで最後の一踏ん張りが利きませんでした。抜きそうな勢いでしたけどね。

レインボーラインは前がなかなか開かずに苦労していましたが、開いてからは上がり34.3の最速の脚を繰り出して6着。
地味ですが走ります。リアルスティールの最初内から伸びて来たのに、ゴール前は外。
リアルスティールが内によれた所で若干外に出すシーンがありましたので、クビ差を考えるとあのまま真っ直ぐ走っていたら抜いていたかもしれません。その位の位置にはいるってことでしょう。

イキートスが外国馬では見せ場があり7着。
小さい馬ですが、パワーを見せました。馬場の影響で内が開いたのは包まれる事が無いという点では恵まれましたが、悪い馬場でも走れる馬だからこそ。良いレースでした。

期待したディーマジェスティはほぼレースに参加していない13着。
どうしたものでしょう。前半から促していましたので、かなり心配になる負け方です。
皐月賞馬位の力があれば普通は通用します。イスラボニータだって見せ場があった位ですし、その時みたいに距離が長くて負けたとか、そういう負け方ではありません。
「セントライト記念は相手に恵まれただけで、思ったより成長していない」というのも考えられます。
ワンアンドオンリーのように、ディーマジェスティが今後苦労する可能性も半分位感じてしまいました。走りも最後バラバラだったし。

ゴール前は悠々と駆け抜けました。
ペースを作り出したのも含め、鮮やかな逃げ切り勝ちです。完全にレースを支配したので、気持ち良かったでしょうね。

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流星もステキで、息の乱れも感じませんし、スタスタと帰ってきました。
武豊騎手は絵になりますね、やっぱり。
こればっかりはなかなか代えがたい存在感です。引退したら「その後」がどうなるんだろう?って思うのはこの人とイチロー選手位でしょうか。
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その他モロモロ

レース後のインタビューで北島三郎さんが歌いました。非常に良かったと思います。

あの方位の知名度があれば、多少ワガママを許してもいいでしょう。詰まるところ競馬はエンターテイメントです。
面白いかどうか、来てよかったと思えるかどうかは重要です。

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あとはここ毎年感じていますが、京阪杯を最後にするのは止めてほしいと思っています。
表彰式も京阪杯も微妙に時間が被るので、もったいないです。
裏で勝手にやるか、表彰式を大切にするかどちらかにしてもいいんじゃないですかね?
ジャパンカップの1つ前レースでいいと思うんですけど、なぜ最終なのかが良く分かりません。

ロンジンの時計に1/100秒まで記録しないのは意味が分からないと毎年言っていますが、もう諦めました。

馬券的な懺悔は別途したいと思います。これは惨敗です。
展開予想はバイアスを外す必要があるのですが、これが最高に難しいと感じました。