写真で振り返る 第67回毎日王冠 レース回顧




スタート~4コーナー

好スタートはディサイファが切りました。
作戦で抑える馬ももちろんいますが、各馬揃って出ました。

最内ヒストリカルは完全に抑えている一方で、2番に入ったステファノスがやや押しながらポジションを取りに行きました。
これが結果的には…となってしまうのですが、これも2番を取ったからにはある程度行かないと逆にロスになります。仕方ない所も。

先頭へは大方の予想通りマイネルミラノが先頭に立ち、ウインフルブルームも外からスーッと前に。
隊列としてはほぼ想定通りでした。

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3番手にディサイファ、外からロゴタイプ、内でクラレント。
大外のロサギガンティアもやや持っていかれているような状態で、間にダノンシャーク。最内からステファノス。

少し離れてアンビシャスにロンギングダンサー、ルージュバックが後方。
大きくポツンと離れた最後方に横山典弘騎手騎乗のヒストリカル。

ペースはもともと流れないと思っていましたので、35.8 – 60.3。
私の予想では35.3 – 59.8 でしたので、前半0.5秒飛ばせばドンピシャでした。馬場もあるでしょうが、マイネルミラノがもう少し引っ張るかなと思いましたが、引きつけた逃げでした。

ロゴタイプはこの時計なら行ってもいいですし、行くんじゃないかというペースでした。
ただ、ある程度前の隊列が決まってしまい、中山ではなくワンターンの東京。途中からペースを上げて先頭を奪うというのは現実的な作戦ではありません。

道中でクラレントやロサギガンティアが掛かっているように、馬場を考えてもスローです。
後方のルージュバックも力が入っているようにも見えましたし、重賞としては緩い流れ。

アンビシャスも最初の3Fは落ち着いていましたが、12.5 とラップが落ちた4F目から少し行きたがる素振りをみせます。
私は良いと思います。このペースで最後まで落ち着いているのもどうかと思いますので。

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4コーナーへ向かう各馬です。
ステファノスを注目していたので見ていましたが、厳しい位置です。
前に4頭いますので、この段階で前に行くにも何らかの「ラッキー」が必要になりそうな位置に入ってしまいました。

ロゴタイプは外からじわっと進出し、想定通りは走れていたはずです。

アンビシャスの後ろでじっくりと構えるルージュバック。
エプソムCの脚から考えれば、いくらスローでも差し切れるという自信があるのでしょう。
早仕掛けとなったオークスを見ていますので、きっちりとした武器を身に着けた強さを感じます。

直線

4コーナーでは馬群が一団に。
大外へ持ち出したヒストリカルが印象的です。

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逃げるマイネルミラノが後続を離します。
ウインフルブルームの後ろにいたディサイファは外、ステファノスは内を選択しました。

ここでロゴタイプの右鞭で1頭分しかなかったスペースが消されました。
それにつられるようにウインフルブルームもラチの方へ。これでステファノスが隣も含めて行き場がありません。この時点で万事休す。

ダノンシャークがロゴタイプに併せに行ったため、ディサイファに残された外側が今度はアウト。
先週のビッグアーサーと同じですね。

外に持ち出した4頭。特にアンビシャスとルージュバックは遮るものがありません。

残り200mを切った所でクビを下げて走るアンビシャスの外からルージュバック。
対して最内で苦しそうにクビを外へ向ける同じキャロットの勝負服のステファノス。

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ロゴタイプもストライドは乱れていませんが、あの場所は伸びません。
完全な外差し馬場。ルージュバックの走りは圧巻の一言。

内側の馬を並ぶ事無く交わし、2頭のマッチレースへ。

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外から前半死んだふりをしていたヒストリカルがいい脚を見せましたが、前とは距離があります。
ロンギングダンサーも伸びています。しかしこちらも前との距離があります。
内側の馬たちは脚が止まりました。開幕週東京。ある意味では異様な光景です。

ルージュバックはエンジンがかかってからの走りが素晴らしく、ストライドが大きいというよりは回転が速いタイプです。
リズミカルなのはそうですが、1歩の間隔が短いというか、テンポの速い曲のような。
シンハライトとか、ミッキークイーンのそれとは違います。

上がり33.4。
これでもう溜めたら切れる事は分かっているので、中途半端なレースはしなくて済みます。
この馬の名声を一気に高めたきさらぎ賞もそうですし、オークスもそう。
「追い込み一辺倒ではないレースができたことはいいことだ。」と私は彼女のきさらぎ賞のレース回顧で書きましたが、間違っていました。追い込み一辺倒でいいです。

今回は外枠でとても走りやすかったでしょう。
東京2000mの場合であっても外枠の方がいいと思います。内枠だと最後方まで意識して下げないといけませんので、スーッと適当に外の後方が取れる外の方が楽だと思います。

アンビシャスは上がり33.6を繰り出し2着。
道中はじっくり待てましたし、最後まで食い下がりました。斤量差3キロ。
もしルージュバックが天皇賞に出てくるなら、差は2キロに。お互い休み明け。逆転可能な範囲です。
前に行ったりしていましたが、このレースがいいでしょうね。この馬も溜めた方がいいです。余計なことをしない方が安定すると思います。

ロゴタイプは8着。厳しい結果です。
手前を替えてからもう一度伸びたのはさすがの力です。
が、ゴール前に一気に飲み込まれたのは距離の壁でしょう。この感じで東京の2000mを走り切るにはやはり厳しいと思います。もともとそうですけどね。
できればマイルに行ってほしいです。スローの逃げでもできないと勝てるどころか好走のイメージができません。

ディサイファは詰まってしまい6着。
詰まらなければもう1つ2つ位は順位を上げられたかもしれません。
馬場もあったでしょうし、レース振りは悪くありません。でも東京2000mのG1だと…。そろそろ鈍くなってきた感じがしますね。
むしろ天皇賞をパスして有馬記念全力の方が見せ場がありそうな気がします。

馬場が向いたのもありますが、ロンギングダンサーが相当走りました。
作戦も走った場所もパーフェクト。
この馬が上がり34.3。ルージュバック、アンビシャスと比較すると破壊力の差が出ました。
展開馬場待ちの馬で、いつ走るか分かりません。この着順は当てになりません。

ヒストリカルはスタート直後に思い切り下げ、人気薄+横山典弘騎手+追い込み馬というポツン戦法。
馬場もそうですが、この馬は良馬場ではなく稍重~重の成績が良かったので、それもありましたかね。
唯一の重賞勝ちの毎日杯も重馬場でしたし、今年唯一掲示板を確保した京都記念も重馬場でした。
人気薄だからこそできる作戦ということもあったでしょうが、伸びは見事でした。割り切った騎乗だったと思います。

対してステファノスは失敗でした。
スタートして押してポジションを取りに行きました。東京1800mの内枠はある程度出していかないと恩恵は受けられません。
予想の時に、「内枠は有利は有利なんですが、ごちゃごちゃしなければ。」と書きましたが、悪い方に的中してしまいました。
思い切って下げるヒストリカル戦法を取るには人気があり過ぎます。

正直もう少し縦長になると思っていました。
逃げる馬もいるし、じっくりと外に出せるレースになるだろうと踏んでいましたが、道中のラップの緩みで4コーナーを待たずして馬群が密集してしまい、コースを取る場面がありませんでした。
最後5着まで持ってきたのは力でしょう。天皇賞はタイミングさえ合えば昨年くらいは走れるはずです。

馬場が特殊だったのもあり、今回の着順をそのまま鵜呑みにはできません。
内側を走って負けた馬(ステファノス、ディサイファ、ロゴタイプなど)は馬場が変わればこんなに負ける事はありません。

 

最後は2頭のマッチレース。
10月の曇り空。東京競馬場のゴールに光が灯った今年の毎日王冠。

スポットライトに導かれるように、ルージュバックが輝きを求めて駆け抜けました。

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天才少女誕生だったきさらぎ賞から始まり、桜花賞でオークスで敗退。秋華賞は体調が整わず、エリザベス女王杯もぶっつけ。
有馬記念で完敗し、中山牝馬Sではシュンドルボンにも負けてしまいました。ヴィクトリアマイルでも伸び負け。

あのきさらぎ賞の衝撃から既に1年以上経過し、エプソムCで素晴らしい復活劇。
そしてこのメンバー相手に毎日王冠まで制しました。
天皇賞でもエリザベス女王杯でもこの走りができればもちろん主役級での出走です。

 

「天才少女」と呼ぶには少しだけお姉さんになってしまいましたが、まだまだ可憐な4歳牝馬。
澄んだ目で、耳をピーンと立てて、レース後は派手な服を着てオシャレしたいお年頃。

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