今年最後の未勝利戦。これも競馬。彼らの未来に僅かでも光明があることを。




毎年の事ですが、スプリンターズステークスの日は1つ区切りのレースがあります。

中山競馬場第3レース。
3歳未勝利戦、ダート1800m。

2016年クラシック世代最後の未勝利戦。
毎年このレースはなるべく生で見るようにしています。
マカヒキ、サトノダイヤモンド、ディーマジェスティと世代を彩る名馬が誕生した一方で、1勝を上げる事が出来ずに「その時」を迎える馬もいるのが競馬の現実。

G1レースの華やかな舞台に立つ馬と対極にある馬だからこそ、考えてしまう事もあります。

1番人気のダノンサーガはスカーレットレディを母の母に持ち、2着があれどもここまできてしまいました。
3番人気のレッドゼルクはレッドセシリアなどを産んだサセッティの仔。

期待も大きかったでしょう。
しかし、勝ちあがることができませんでした。

2016年の3歳馬は美浦に1,078頭、栗東に1,194頭の2,272頭の登録されています。
http://www.jra.go.jp/datafile/resist/pdf/registration_count.pdf

対して新馬、未勝利のレース数は2歳戦が550レース、3歳戦が871レースの1421レース。
単純計算でも現在登録されている馬の中で851頭の馬は中央競馬で未勝利で終わった計算になります。

 

ここ数年は中央競馬に競走馬登録をしている馬は4,500頭前後です。
既に半分になっています。その上で2/3しか勝ち上がれません。厳しい世界です。

受け皿となる地方競馬も縮小となっているため、登録される数が減っています。
現在は毎年生まれるサラブレッドは約7000頭です。

主なデータは平成28年3月に農林水産省生産局畜産部畜産振興課のものから引用しています。
http://www.maff.go.jp/j/chikusan/kikaku/lin/pdf/27_zentai.pdf

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特に地方競馬は最大5000頭を超えていたにも関わらず、最近だと2000頭を切りました。
20年で約4割になってしまったということです。10000頭→7000頭になった分の全てが地方競馬分ということでしょうね。

 

中央競馬で馬名登録を抹消された馬の行く末は地方競馬というのが一気に増えました。
平成元年には全体の25%でしたが、現在は56%まで上昇しています。
対して「乗馬」は減っています。

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この「乗馬」は競馬ファンならご存知の通り文字通りではありません。
こんなに乗馬が毎年増えていたら乗馬クラブだらけになります。しかし、そうなっていないのは悲しい現実。
少しはいますけど、この数字ほど多い訳がありません。

 

 

これに対して、地方競馬はというと「乗馬」が増えています。
平成元年当時は416頭、全体の10%程度でしかなかったものが、平成26年には1621頭で全体の32.5%を占めるようになりました。

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中央で勝てなかった馬などが地方に行き、そして地方競馬でも勝てなかった馬たちが乗馬として「処分」されていきます。
統計値を見ると今は大体この流れになるのでしょうね。

 

 

平成26年の4981頭の地方競馬の登録抹消自由は以下の通りになっています。

  • 繁殖 367頭(7.4%)
  • 中央競馬 410頭(8.2%)
  • 斃死(へいし) 884頭(17.7%)
  • 乗馬 1621頭(32.5%)
  • 時効 1633頭(32.8%)
  • その他 66頭(1.3%)

斃死(へいし)は安楽死処分みたいなものですし、乗馬も時効も生きている可能性はこの数字と比較してしまうと実際は厳しい数字になるでしょう。

平成21年から22年にかけて、乗用馬頭数は全国で15242頭→15543頭に増えています。
しかし、僅か301頭。

平成21年に中央、地方で「乗馬」となっている馬は中央1389頭、地方1318頭。合計で2707頭。
当然死んでしまう馬もいるでしょうが、数字としては納得できるものではありません。
この数字でプレゼンされたら、「これ数字あってないよね?」と質問されるでしょう。

仮に最悪を考えると、83%の馬の未来は…ということです。

 

これも現実ですし、競馬の一面です。
馬を1頭管理しようと思ったら乗馬クラブで飼うにも月10万円位は覚悟しないといけません。
年を取ってしまうと満足に試合やレッスンなどで使う事もできません。

馬は20年位は生きますので、仮に6歳で引退したとしても14年は面倒をみないといけません。
乗馬クラブに預けたとして10万円/月×14年(168ヶ月)=1680万円。
普通の人が世話をできるレベルを超えてしまうので、並みの覚悟で1頭世話するのは無理でしょう。

そう考えると、悲しい現実だろうが目を背けられません。
もちろんかわいそうです。でも軽い気持ちで飼う事はできません。
少なくとも私ができる事と言えば、乗馬クラブで馬に乗ってあげる事だけ。1頭でも乗馬に行ける馬がいけばいいという位。

 

2016年最後未勝利戦のスタートシーンです。
これから彼らがどうなるか分かりません。しかし、統計を信じるなら地方競馬に行ける馬も多いでしょう。まだ生き抜ける可能性はあります。

この中から、そして中央競馬で勝てなかった851頭の内、1頭でも救われることをファンとして願うばかりです。

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2 件のコメント

  • こんばんは。
    私はホーストラストという引退した馬たちの養老牧場で一口里親をやっています。
    庶民なので本当に一口ですが。
    あとは最近乗馬を始めました。上達する気配はまったくありませんが、
    馬に会ってふれあいたくて通っているようなものです。

    JRAや地方競馬はもっと真剣にこの問題に取り組む義務があると思います。
    売上が上がったのなら控除率を下げるべきだし、
    新規客を呼びこみたいらしいけど効果が疑問で
    馬への敬意が全く感じられない意味不明のCMにかける資金を
    引退した馬たちの生活費にあててくれれば、
    幸せに暮らせることができる馬が増えるのに。
    馬主たちにも、最後まで面倒をみる責任をもたせるべきです。
    早く走れなくても、尊い命に変わりはないのです。

    • こんにちは。

      ホーストラストを調べてみましたが、色々な所でこういうのがあるんですね。
      最近だとThanks Horse Projectとかもありますし、何か参加してみようかな。
      私は乗馬で馬と関わっていますが、少しでも彼らに仕事があれば、という感じです。自己満足ですが、やらないよりはいいと割り切っています。

      JRAはカッコつけていいとは思います。
      「こういう事も意識しています」と前面に押し出して、スーパー未勝利戦の売り上げの何%を寄付しますとかね。少額でも意味はあるでしょうし。
      管理も大変だし、世話するのも大変な生き物だからこそ、セカンドキャリアの大切さを考えるきっかけにもなりますから。

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